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エドモントサウルスの全貌が明らかに~日本に恐竜が渡るまで~

エドモントサウルスが北米からアジアに渡った可能性を示唆 北大

北海道大学の小林快次よしつぐ教授らは、米国ペロー自然科学博物館との共同研究「北極圏恐竜研究プロジェクト」で、白亜紀末(約6900万年前)の植物食性恐竜、ハドロサウルス科ウグルナールク属が同科のエドモントサウルス属であることを解明した。この解明により、エドモントサウルス属が広範囲の緯度に生息し、環境変化への高い適応能力を持っていたことが示された。また、ベーリング陸橋を通じてアジアと北米間を移動できた可能性も示された。この成果は、7日付の国際科学誌「プロスワン」に掲載された。

北極圏は気温が低く、冬になると日照時間が制限され、餌も限定される。そんな厳しい北極圏に多種多様な恐竜が生息していたことがわかってきた。中でも多くの骨格化石が見つかっているのが、米国アラスカ州のノーススロープ郡に露出するリスコム骨化石密集層だ。この化石産地からは特に多くの植物食性恐竜ハドロサウルス科が見つかっており、これまで6000以上の骨が回収されている。2016年に行われた研究により、このハドロサウルス科はハドロサウルス亜科(空洞なトサカを持たないハドロサウルス科恐竜)の新属新種として「ウグルナールク・クークピケンシス」と命名されていた。

しかしこの恐竜は、大人の骨がほとんど見つかっていないこと、動物の骨の形状は成長に伴って大きく変化することから、この分類の有効性(独立した属か否か)が疑問視されていた。

加えて2019年には北海道大学を中心とした研究チームが、同じリスコム骨密集層から別種のハドロサウルス科(空洞なトサカをもつランベオサウルス亜科)を発見し、同時代・同地域に少なくとも二種の近縁な恐竜が生息していたことを明らかにした。このことから、ウグルナールク属が複数種からなる「キメラ」である可能性が指摘されていた。

今回の研究で、ウグルナールク属はエドモントサウルス属に固有な特徴を持つことが判明した。その一方で、ウグルナールク属を定義する特徴は、エドモントサウルス属にも同様の特徴が見られるか、もしくは成長によって変化する特徴であることが判明した。

また、ウグルナールク属がキメラである可能性を排除するため、混乱を招きづらい頭骨だけを用いて系統解析した結果、ウグルナールク属はエドモントサウルス属の一種、特にエドモントサウルス・レガリスに近縁な可能性が示された。

以上から、アラスカ州のハドロサウルス亜科恐竜はエドモントサウルス属であり、先行研究で「ウグルナールク・クークピケンシス」との命名は無効であることが明らかになった。

これまでエドモントサウルス属の分布域は、北緯40度程度の米国コロラド州北部を南限とし、北緯53度程度のカナダアルバータ州南部を北限とすると考えられていた。しかし、今回の研究で北緯70度程度まで北限が広がることになる。これだけ広い生息域を持っていたにも関わらず形の違いが小さいことから、この恐竜が北極圏への高い適応能力を持っていたことがわかる。

また、エドモントサウルス属は、2013年に北海道むかわ町で発見され、2019年に命名されたカムイサウルス属(通称:むかわ竜)と同じエドモントサウルス族の一員であることから、エドモントサウルス族が北環太平洋沿岸に広く分布していたことになる。

白亜紀末当時、ユーラシア大陸と北米大陸は現在のベーリング海峡が地続きで繋がっていたが、恐竜類の種類によって、両大陸を自由に行き来できたものとできないものがいたと考えられる。エドモントサウルス族は、北極圏の環境に適応できたことから、厳しい環境が大陸間の移動の障壁にならず、北米からアジアに渡り、最終的にカムイサウルス属といったアジアの恐竜に進化したと考えられる。

両大陸を自由に行き来できた理由の一つとして、白亜紀後期は地球全体が温暖な環境にあり、加えて極域と低緯度域の気温差も現代に比べて小さかったため、それほど大きな環境の違いは無かったことが挙げられる。それでも冬の日照時間の減少やそれに伴う植生の変化は存在するので、最小の形態変化で緯度の違いによる環境の違いを乗り切れるほど、ハドロサウルス科は緯度の違いによる環境の変化に対する適応能力を持ったグループだったと言える。

小林教授は、「アラスカ州のエドモントサウルス属と日本のカムイサウルス属が含まれるグループ、エドモントサウルス族は環北太平洋に広く分布した、非常に大きな成功を収めた恐竜たちだったのだろう。彼らがマンモスや毛サイ、そして初期の人類のようにベーリング陸橋を渡って北米とアジアを行き来していたことを考えると感慨深い」とコメントしている。

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