いかなる場所に街や道が発展するのか?粘菌アルゴリズムを用いて検証 香川大など

いかなる場所に街や道が発展するのか?粘菌アルゴリズムを用いて検証 香川大など

香川大学、東北大学、北海道大学は23日、都市と道路網の立地と発展のシミュレーションモデルに、粘菌アルゴリズムを用いて実際の人口分布と近い状況が再現できたと発表した。この研究成果は「Scientific Reports」のオンライン版に掲載された。

「いかなる場所に街や道が発展するのか?」という問いに対して、自然環境や交易や産業、あるいは政治・歴史的背景などの様々な観点から長年議論されているが、具体的に地形や気候・水資源などの諸要因がどの程度寄与しているのかを定量的な判定をすることが難しく、科学的実証はできずにいた。

研究グループは、地理情報システムと数理モデルを融合したアプローチにより現実の地形条件にあわせた都市と道路の共発展シミュレーションを構築し、地形条件効果を定量的に分析した。シミュレーションには、真性粘菌の輸送ネットワーク形成をヒントに、道の形成(集積から流れが生まれる)と都市の集積(流れから集積が生じる)との循環的な因果関係に基づくパターン形成モデルを構築した。また、背景の海岸線、標高、河川などの地形条件を平坦地から段階的に現実に近づけていくことで、シミュレーション結果の変化を調べた。

古代ローマの人口分布を出発点とした、中世イタリアから現代までの長期間シミュレーション実験
古代ローマの人口分布を出発点とした、中世イタリアから現代までの長期間シミュレーション実験

90mの高精度地形上で、古代ローマの人口分布を出発点として、中世イタリアから現代までの長期間の再現実験を行った。現実の地形条件を課すことで、実際の人口分布と近い状況が再現され、全体で72%の改善を確認できた。地形条件しか考慮していないにも関わらず、トリノやミラノ、パレルモなど多くの地域で高い再現性が得られた。その一方でナポリやローマは予測に大きな差が生じており、地形条件以外の諸要因が重要であることを示している。

段階的に地形条件を現実に近づけていくことで、どれだけ実際の人口分布を再現できるのか。情報論的距離を用いて、定量的に地形条件の効果を評価する。
段階的に地形条件を現実に近づけていくことで、どれだけ実際の人口分布を再現できるのか。情報論的距離を用いて、定量的に地形条件の効果を評価する。

研究グループは今後、シミュレーションに水資源や地質、植生などの環境要因を加えることで、都市の立地と発展に関する新たな仮説・実験型の研究手法となることが期待できるとしている。

画像提供:香川大(冒頭の写真はイメージ)