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特異な才能を持つ「ギフテッド」の指導・支援 文科省が予算要求へ

昨今、「ギフテッド」がにわかに関心を集めている。ギフテッドとは「天から才能を授かった人」という意味で、アインシュタインやビル・ゲイツ、フェイスブックを創設したマーク・ザッカーバーグなども、この「ギフテッド」だと言われている。

文部科学省(以下、文科省)では2021年7月から、特異な才能を持つ子ども「ギフテッド」への支援に向けて有識者会議が開かれ議論が始まった。末松信介文科相は7月26日の閣議後会見で、来年度予算の概算要求に盛り込む意向を示し、2023年度から支援に乗り出す計画だ。直近で開催された第12回の有識者会議では具体的な施策の方向性について議論が進み、支援策の柱とする提言の素案がまとめられた。

有識者会議ではギフテッドは、「同年齢の児童生徒の中で、知能や創造性、芸術、運動、特定の学問の能力(教科ごとの学力等)等において一定以上の能力を示す者」と定義づけられている。例えば、言語能力が高く、0歳10カ月程度で日本語及び英語でかなりしっかりコミュニケーションがとれる子や、2歳から数字への理解が早く、小3で中学数学、小5で数IIBを習得する数理能力が高い子。小学生で上級レベルの曲を初見でバイオリンで弾くような音楽能力が高い子、5歳で地球温暖化を理解して海面上昇に怯える子、3〜4歳から笑顔は何のためにあるのかなど哲学的なことを考える子など、その能力はさまざまだ。

彼らはその能力の高さや特性を理解してもらえず、生きづらさを感じることが多いという。昨年夏にギフテッドの当事者とその関係者を対象に実施されたアンケートによると、「教科書の内容はすべて理解していたが、自分のレベルに合わせた勉強をすることはまったく許されなかった」「あまり周りに理解をしてもらえない。友達に変わっている子扱いされる」などの回答があった。こういった状況を受けて、文科省でも政策として本格的に取り組まれるようになった。

公教育にエリート教育が持ち込まれることを懸念する声もあるが、末松文科相は「特定の基準や数値によって選抜された子どもたちのみに対してプログラムを提供することは、ラベル付けにつながったりとか、あるいは過度な競争を招いたりする。文科省としては、そういった意味でのエリート教育を推進することはしない」としている。全ての子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びが一体的に実現されることを目指すものだという考えだ。

第12回の有識者会議においては、(1)社会や学校の理解を醸成するための周知・研修の促進(2)多様な学習環境の充実(3)特性を把握するサポート(4)特異な才能のある児童生徒の指導・支援に関わる学校外の機関からの情報集約・提供(5)実証研究を通じた実践事例の蓄積、といった方向で具体的な支援策に関する話が進んだ。文科省は事業化に向け、来年度の概算要求に関連予算を盛り込むべく議論を進めている。

(写真はイメージ)