信州大学、超音波によるマイクロプラスチック回収装置を開発

信州大学、高濃度でマイクロプラスチックを回収できる装置を開発

信州大学は3月31日、環境中の微小なマイクロプラスチックを回収するデバイスを開発し、従来の濃度の百倍で回収することに成功したと発表した。今後の機能改善により、洗濯機から排出されるマイクロプラスチックの濃縮回収装置などの開発が期待できる。

近年、微小なプラスチック片であるマイクロプラスチックが新たな地球規模の生態学的問題として広く認識されるようになった。多くのプラスチックには有害な添加物が含まれていることや、汚染された環境下では有害化学物質を吸着する可能性があることから、その影響が世界的に懸念されている。

マイクロプラスチックの調査や分析のサンプリングには、メッシュサイズが約0.1mm程度のプランクトン用ネットが広く用いられるが、そのサイズより小さいものは回収されないために実態解明が困難だった。より小さなマイクロプラスチックを回収するためにはメッシュサイズを小さくする必要があるが、サイズは小さくするほど目詰まりしやすくなる。また、メッシュで回収したマイクロプラスチックは人間が一つ一つピンセットでピックアップしなければならず、微小なものはその作業自体が困難だった。そのため、微小なものを含めたマイクロプラスチックを連続回収できる技術開発が求められていた。

信州大学の研究グループは、微細な流路中で超音波を照射すると微小な粒子を流路中央に集められる「音響収束」と呼ばれる技術に着目。従来のデバイスでは濃縮率が3倍程度と低いことが課題だったことから、研究グループは、音響収束による分離機構を四連続で設けた流体デバイスを開発し、マイクロプラスチックを高濃度に濃縮できるかどうかを実証した。

音響収束による濃縮原理

音響収束による濃縮原理

研究グループが直径が25、50および200μmの粒子からなる微小マイクロプラスチック懸濁液と、直径が10、15および25μmの粒子からなる超微小マイクロプラスチック懸濁液を用いてデバイスの機能評価を行ったたところ、前者では全粒子について80%を超える回収率が得られ、後者では直径10μm粒子が70%程度、それ以外の粒子が80%以上という回収率が得られた。

今回の研究では、開発した音響収束による流体デバイスによって、比較的大きい200μmの粒子から、従来の濾過では回収が難しかった10μmの微小な粒子まで高濃度に濃縮回収できることを実証した。今後、流路を大量に並列化することで、実用的な処理流量の達成を目指していく。

画像提供:信州大学(冒頭の写真はイメージ)