
小惑星トリフネへ極限接近 はやぶさ2が描く日本の宇宙探査の未来
小惑星探査機「はやぶさ2」が、新たな探査記録を打ち立てた。7月5日18時30分頃、はやぶさ2は小惑星「トリフネ」へのフライバイ探査を実施し、中心から約744m(小惑星表面から約400m)という極めて近い距離を秒速約5kmという相対速度で通過することに成功した。平均直径約540mの小さな天体に対し、宇宙空間で探査機を正確に導く高度な航法技術が実証された。今回の接近は、太陽系天体のフライバイ探査における最小距離を更新する成果となった。
リュウグウからトリフネ、そして2031年の目的地へ
はやぶさ2は、2014年12月3日に打ち上げられ、2018年6月に小惑星リュウグウへ到着した。2019年には小惑星表面への人工衝突実験によるクレーター形成と、地下由来の試料採取に成功し、2020年12月6日には採取した試料を収めたカプセルを地球へ帰還させた。しかし、探査機本体の役割はそこで終わらなかった。残された燃料や機器を活用し、「はやぶさ2拡張ミッション」として運用を継続。新たな目標としてトリフネを目指し、さらに2031年には別の小惑星1998 KY26への到達を目指している。
フライバイを成功させた自律航法と「惑星防衛」への応用
今回の成功を支えたのは、高度な航法技術だ。地球から遠く離れた探査機をリアルタイムで操縦することはできない。はやぶさ2は、搭載カメラによる観測や電波による位置計測を組み合わせた「光学電波複合航法」を用いて、トリフネへの接近軌道を調整した。その結果、目標としていた通過地点からのずれは約120mに抑えられた。また、レーザー高度計による距離計測も活用し、高速で移動する小惑星への正確な接近を実現した。この技術は、将来、地球へ接近する小惑星を調査・対応する「惑星防衛」にもつながると期待されている。
太陽系の起源解明と、日本の宇宙探査が示す未来
トリフネは、太陽系形成時の情報を残している可能性がある地球近傍小惑星だ。今回得られる画像や観測データから、小惑星の形状や表面の特徴を詳しく調べることで、太陽系がどのように形成されたのかを理解する手がかりが得られると期待される。リュウグウの試料を地球へ届けた後も、宇宙で挑戦を続けるはやぶさ2。その姿は、日本の宇宙技術が「過去の成果」ではなく「未来の探査」へつながっていることを示している。

(冒頭の写真は小惑星トリフネへ向かう「はやぶさ2」の想像図。)

