重度の歯周病の歯を残すことが海馬の萎縮速度を速める可能性 東北大調査

東北大学は、歯周病の重症度と歯の数が、アルツハイマー病の初期症状である海馬の萎縮の速度とどのように関連しているのかを解析し、軽度の歯周病では歯が少ないほど、重度の歯周病では歯が多いほど、左海馬の萎縮が速いことを明らかにした。この結果は、単に歯を多く残すだけでなく、適切な管理により健康な歯を多く残すことが重要であることを示している。6日に米国神経学会学会誌「Neurology」に掲載された。

日本国内においては、45歳以上の半数以上が歯周病を有していると言われており、歯の喪失の最大の原因となっている。歯の喪失や歯周病がアルツハイマー病のリスクを高める可能性が指摘されてきたが、歯周病の歯を残すことと、歯を失うことのどちらがリスクを高めるのかはわかっていなかった。

東北大学の服部佳功教授らの研究グループは、岩手県花巻市大迫町で55歳以上の地域住民を対象に行われている疫学研究のデータを用いた。2009年から2017年の間に4年間隔で脳MRIを2回以上撮像した172名のデータを抽出し、ベースライン時の歯数や歯周病と、その後4年間の海馬の萎縮速度との関連を解析した。さらに、同じ4年間の認知機能検査の点数変化と歯数や歯周病との関連についても解析を行った。

その結果、歯の数と歯周病をそれぞれ単独で取り扱った場合は海馬の萎縮速度との関連は認められなかったが、歯の数と歯周病の相互関連を考慮した解析では、軽度の歯周病では歯の数が少ないほど左海馬の萎縮速度が速く、重度の歯周病では歯の数が多いほど左海馬の萎縮速度が速いことが明らかになった。具体的には、歯1本あたりの平均歯周ポケットの深さが小さい場合、歯が1本少ないと左海馬の萎縮速度は約0.9歳分速くなり、平均歯周ポケットの深さが大きい場合、歯が1本多いと左海馬の萎縮速度は約1.3歳分速くなった。同様に、認知機能の変化においても歯周病が軽度の場合には歯の数が少ないほど認知機能が低下するのに対して、歯周病が重度になると歯の数が多いほど認知機能が低下する傾向があることがわかった。

この結果から、重度の歯周病の歯を残すことが海馬の萎縮を速めるということが明らかになり、単に歯を多く残すことだけでなく、健康な歯を残すことが認知症予防の観点から重要であることが示された。研究グループは今後、より大規模な研究によって本結果の検証をする必要があるとしている。

画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)