低温焼結させた全固体電池を開発、低温の過酷環境への応用に期待 九大

九州大学は13日、従来より250℃以上低温で焼結させた全固体電池を開発し、今まで使用できなかった-25℃~-120℃の温度範囲でも動作することを確認したことを発表した。従来のリチウムイオン電池では使用できなかった過酷環境への応用が期待できる。この研究成果は英国王立科学会誌に掲載された。

2050年までにCO2の排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するために、充電して繰り返し使える次世代二次電池の研究が進んでいる。現在最も普及しているリチウム(Li)イオン二次電池を改良して、軽量化、電池性能向上、安全性向上を図るために、さまざまな原理のものが研究されている。そのうち、リチウムイオン電池の電解質を固体電解質に置き換えて、安全性を高めようとするものが全固体電池だ。

固体電解質の中でも酸化物系は、有毒ガスを発生せず、高温でも化学的・熱的に安定であるため、安全性の高い電池として注目されている。全固体電池では、電池作動時に正極と負極間でスムーズにLiイオンを輸送するために、電解質を緻密化する必要があるが、酸化物系固体電解質の緻密化には1000℃以上での高温焼結が必要だ。しかし、高温のプロセスでは電極材料と電解質の間で意図しない反応が起こって、電池性能を著しく低下させるという問題がある。

研究グループは、電解質材の低融点焼結助剤をナノレベルで複合化することで、750℃での焼結を実現させてきたが、Li金属に対する不安定性という欠点があった。今回は新しい燃焼機構を活用することで、Li金属に対する安定性を確保できる電解質を開発した。2種類の焼結助剤を用いて液相と固相が共存している状態で焼結させることで、Li金属に対する安定性を実現した。

新たに開発した材料を用いて全固体電池を作成して電池特性を評価したところ、室温環境においてトップレベルの性能を示した。また、材料が安定なため、-25℃~-120℃といった従来の有機電解液を用いた電池では使用できなかった温度範囲でも電池動作することを確認した。

同研究グループは、今後は充放電サイクルに伴う電池劣化要因の特定を行い、容量・出力・耐久性を高次元で実現できる電極微構造を実現したいとしている。

全固体電池の外観/正極層内の拡大図と電池特性

画像提供:九州大学(冒頭の写真はイメージ)