
日本庭園を眺めることでストレス軽減 長崎大が仕組みを解明
長崎大学を中心とした国際研究チームが、日本庭園を眺めることでストレスが軽減される仕組みを明らかにした。この研究では、心拍数の低下や気分の改善が確認され、視線の動きとリラックス効果の関連性が初めて実証された。『Frontiers in Neuro Science』に15日付けで掲載された。
現代社会では、多くの人がストレスを感じており、その対処法が求められている。日本庭園は「見るだけで心が落ち着く」と言われることがあり、古くから禅寺などで瞑想の助けとされてきた。自然とのふれあいが心の健康に良い影響を与えることは知られているが、日本庭園のような人工的な空間の癒し効果の仕組みは、実はよくわかっていなかった。
研究チームは、明治時代に山形有朋の別荘として京都に造られ、優れた剪定技術によって、遠くの東山を借景した風景が完璧に維持されている座観式庭園の名園「 無鄰菴 」と、京都大学構内にある一般的な管理の日本庭園の2カ所で、参加者の視線の動きと心拍数を測定した。その結果、無鄰菴では視線が左右に活発に動き、心拍が下がり、気分がよくなる傾向が見られた。これに対し、大学構内の庭園では視線の動きが狭く、心拍数もあまり変わらなかった。このことから、日本庭園の特定の要素に注目するのではなく、庭園全体をゆっくり見渡すような視線の動きがリラックス効果を高める鍵であることがわかり、これはPTSDの治療に使われる「EMDR」と呼ばれる心理療法と似た効果を持つと言う。
今後は、日本庭園のデザインや配置を工夫することで、より効果的なストレス軽減が期待される。また、学校や病院、公園などの公共空間において、庭園を活用した心のケアが進む可能性がある。伝統的な文化と現代の科学が融合し、私たちの生活の質を向上させる新たな道を開くものと言えるだろう。
写真提供:植彌加藤造園