
消費者の声が売り場を動かす買い物カゴ投票」コープみらいとWWFが実証実験
世界自然保護基金ジャパン(以下、WWFジャパン)と滋賀県立大学は、スーパーマーケットで消費者が簡単に意見を示せる仕組み「買い物カゴ投票」の実証実験結果を公表した。環境配慮型商品の導入や売り場改善などに、顧客の声を反映させる新たな手法として注目されている。
「買い物カゴ投票」は、スーパーが設定した二者択一の問いに対し、買い物客がカゴを返却する際に「YES」「NO」の置き場に分けて返すことで意思表示を行う仕組み。特別な設備を必要とせず、日常の買い物の流れの中で気軽に参加できる“ナッジ型コミュニケーション”として設計された。
実証実験は2024年10月、東京都内のコープみらい葛飾白鳥店で6日間実施された。「一部のお肉をトレーからノントレー包装に変更してもよいか」との問いに対し、投票総数806票のうち約72%が賛成。この結果を受け、同店では鶏肉の一部をノントレー包装に切り替えた。これにより、商品1個あたりのプラスチック使用量が2.82グラム削減され、温室効果ガス排出量も55%減少したという。ほかにも「売上が寄付につながる商品コーナーの設置」を問う投票では、約7割が賛成した。
今回の実証実験には、6日間で延べ2267人(来店者の約3割)が報酬なしで自発的に投票に参加。賛成率はいずれの設問も約7割にのぼった。前述したノントレー販売では、後日「皆様の声を取り入れました」というパネルとともに売り場に反映したところ、販売比率が実施前の1.42倍に増加した。
また、店頭では「返却が投票になるのは面白い」「手軽で参加しやすい」といった声が寄せられた。同店の斉藤店長は「当初はお客様も戸惑っていたが、次第に協力的に参加してくれた。環境への関心を知る貴重な機会になった」と話す。実験後の検証では店舗に対する好感度の向上も確認され、企業と顧客の関係性強化に寄与する可能性も示唆された。
滋賀県立大学の山田歩准教授は「人間は理想通りに行動できない弱さを持つが、“気軽に参加できる”仕組みがあれば行動は変わる。『買い物カゴ投票』はその好例」と述べた。
WWFジャパンブランド・コミュニケーション室の増本香織氏は「店舗と顧客がともに考え、行動するサステナブルな社会づくりの一歩」と語り、導入マニュアルをオープンソースとして公開している。
この取り組みは2025年度グッドデザイン賞を受賞。審査委員からは「日常の購買行動を社会変革へつなげるデザイン」と評価された。WWFジャパンでは今後、全国の店舗での展開を呼びかけている。
(写真はイメージ)

