稲の刈り株を新たな糖質資源に 農研機構が可能性示す

農研機構は24日、稲の刈り株に含まれる糖質の量を見積り、その資源としての有用性を明らかにしたと発表した。刈り株の新たな利用価値の創出が期待できるという。

稲作などの農業では、作物の光合成によって空気中のCO2を捕集して植物体組織の有機成分へ変化させている。食糧生産と並行して茎葉などの非可食部に蓄積された有機成分から糖を取り出してエタノールに変換し、バイオ燃料などに活用できれば、低炭素産業の創出に貢献できると期待される。

しかし現状、日本ではバイオマス利用が進む米国などと比較して経営体当たりの農地面積が小さく、国土に占める農地の割合も低いことから、大量のバイオマス原料を集めることが難しいという課題がある。そのため、限られた農地から得られる非可食原料の回収量を最大化する必要がある。

農研機構の研究グループでは、バイオマス利用用途として開発された水稲品種「北陸193号」の研究を進める中で、これまで原料として利用されてこなかった刈り株に着目。刈り株は大部分が地下に埋もれており、通常は土壌にすき込んで肥料にしてしまう部分で、すき込みによって地力の維持・向上が図れる一方、メタン発生の原因となることも指摘されている。

同グループは、刈り株の糖化原料としての有用性を研究した。その結果、刈り株の乾燥重量は稲わらの7割強で、含まれる糖の量も約6割に相当することがわかった。特に、刈り株の地際部・分げつ基部は、稲わらからと同様に糖の効率的な回収が可能であることも確認できた。これらの結果から、国内の刈り株中には200万トンを超える糖が埋もれていると見積もることができるという。

今後は、温室効果ガスの発生抑制効果や地力維持への影響、刈り株回収技術などの研究動向を注視しながら、刈り株の糖化利用プロセスを開発していく。そして、刈り株の最適利用技術の適用を含めた、持続的かつ強靱な稲作農業の実現を目指すとしている。

稲(北陸193号)および刈り株の外観(イメージ)

(冒頭の写真はイメージ)