ノーベル賞を陰で支える日本独自の研究資金システムとは

ノーベル賞は、世界中の研究者が長年の努力で成し遂げた発見や発明に対して贈られる、最も権威ある賞の一つだ。今年は日本人研究者が生理学・医学賞と化学賞を受賞し、日本の科学技術の底力を世界に示した。こうした受賞の背景には、長期的な基礎研究を支える日本独自の研究資金の仕組みがある。

日本では研究資金が「科研費」と「競争的資金」という二段構造で成り立っている。科研費(科学研究費助成事業)は、大学や研究機関の研究者が自由にテーマを選んで申請できる制度であり、独創的な基礎研究を支えている。一方、競争的資金は、国があらかじめ設定した社会的・技術的課題に取り組む研究を支援するものである。この二つは互いに補い合う関係にあり、自由な発想と政策的な重点の両面から科学を発展させる仕組みとなっている。

各国の研究開発費投資額を比較した俯瞰報告書によると、2022年時点で米国は9,232億ドル、中国は8,119億ドル、EUは5,421億ドル、日本は2,008億ドルである。それでも日本が世界的な成果を上げているのは、科研費と競争的資金を組み合わせて効率的に研究資金を配分できているからであろう。限られた資金を戦略的に循環させることで、成果を最大化している点が特徴だ。

もちろん、こうした制度にも改善の余地はある。申請や審査の負担、短期間での成果要求、雇用の不安定さなどが課題として指摘されている。それでも、ノーベル賞を受賞した研究の多くは、こうした制度に基づく長期支援の中で育まれたものだ。今年受賞した両氏はいずれも科学技術振興機構(JST)の競争的資金を活用しており、坂口博士はさきがけやCREST、北川博士はERATOやACCELを通して世界をリードする成果を上げてきた。日本がこれからも世界に誇る研究を生み出すためには、研究者が安心して探求できる環境を守り、限られた資金をさらに賢く活かす工夫が求められる。

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