廃棄太陽光パネルからの希少元素の回収手法を開発 産総研

産業技術総合研究所(産総研)は9月29日、太陽光パネルのカバーガラスから希少元素のアンチモンを抽出する手法を開発したと発表した。今後、廃棄太陽光パネルからの希少元素の回収・再資源化につながることが期待できる。

太陽光パネルの構成品の一つであるカバーガラスは、多くの場合アンチモン(Sb)を添加することで透明性を高めている。Sbは希少元素で、国内需要のほぼ全量を輸入に依存している。2010年頃から飛躍的に拡大してきた太陽光パネルの多くが耐用年数を迎える2030年代後半には、カバーガラスを大量に処理しなければならなくなる。そのため、カバーガラスからSbを効率的に分離・回収する技術の開発が求められていた。

研究グループは、100℃以上かつ1気圧以上の高温高圧下で水を用いて材料を処理する水熱処理に着目した。太陽光パネルから外したカバーガラスを粉砕して粉末状としたものを、一般的な圧力容器の標準設計温度以下で1時間から6時間の水熱処理を行った。処理後の溶液を遠心分離により液相と沈殿物(粉末)に分離したところ、Sbが溶液中に抽出された。Sb抽出率は処理時間1時間で69%、6時間で86%となった。

今回の研究で、工業的に実現可能な温和な条件下の水熱処理でSbを効率的に抽出可能な手法が開発できた。今後は社会実装に向けて、Sb抽出の高効率化と反応スケールの大型化を図るとしている。

水熱処理によるカバーガラス再資源化のプロセス概要図

画像提供:産総研(冒頭の写真はイメージ)