
遠い島国の話ではない? 太平洋の海をめぐる資源と外交の現在
太平洋には、人口数万人ほどの小さな島国がいくつもある。ところが、こうした国々が関わる海は、陸地からは想像できないほど広い。沿岸から200海里(約370キロメートル)までの「排他的経済水域(EEZ)」では、魚や海底資源などの天然資源について権利を持つからだ。いま、その海を舞台に、外交、漁業、海底資源をめぐる動きが相次いでいる。
8月30日から9月4日まで、パラオで「太平洋諸島フォーラム(PIF)」の首脳会議が開かれている。太平洋の島国など18の国・地域が参加する地域協力の枠組みだ。今回注目されているのが台湾だ。台湾の林佳龍外交部長は関連行事に出席する予定で、台湾と外交関係を持つパラオ、ツバル、マーシャル諸島との関係を深める狙いもある。一方、台湾を自国の一部とする中国は、台湾の参加に反発している。
島国が守ろうとしているのは外交上の立場だけではない。8月3~14日、PIFの漁業機関である「太平洋諸島フォーラム漁業機関(FFA)」が調整した広域監視活動では、約2750万平方キロメートルの海域で3000隻以上を監視し、133隻を乗船検査した。その結果、違法操業や漁業許可違反などで4隻が拘束され、港へ移送された。キリバス、パラオ、パプアニューギニアの当局が対応し、4隻には中国船やインドネシア船が含まれていた。漁業は島国にとって重要な収入源であり、海の資源を守ることは経済を守ることにもつながる。
さらに、海の「底」も注目されている。太平洋の海底には、ニッケルやコバルトなど、スマートフォンや電気自動車の電池に使われる貴重な金属を含んだ「多金属団塊」がある。重要な鉱物資源だが、深海の生態系への影響には分かっていないことも多く、開発を進めるか環境を守るかで島国の意見も分かれている。日本も海底資源の当事者だ。日本は領海とEEZを合わせると国土の約12倍に及ぶ海域を持ち、南鳥島周辺のEEZではレアアースを含んだ泥が確認されている。2026年2月には、約6000メートルの深海からレアアースを含む泥の回収にも成功した。ただし、商業化には技術やコスト、環境への影響など課題も残る。
台湾をめぐる外交、外国漁船の取り締まり、海底資源の開発。一見すると別々の問題に見えるが、共通するのは「広大な海を誰が、どのように利用し、守るのか」という問題だ。海に囲まれた日本にとっても、これは遠い島国の問題ではない。漁業資源をどう守るのか、海底資源をどう利用するのか、そして開発と環境保護をどう両立させるのか。太平洋の島国と日本は、それぞれの海をめぐって同じ課題に向き合っている。
画像提供:Luka Peternel / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(パラオのロックアイランド。小さな島々の周囲には広大な海が広がる。)

