
氷河が崩れるとなぜ洪水に? ヒマラヤで高まるリスク
氷河が崩れると、なぜ洪水が起きるのだろうか。8月26日、ネパールと中国・チベットの国境付近で、氷河とその下の岩盤が大規模に崩落した。大量の氷や岩、土砂が谷へ流れ込み、川を急激に増水させて洪水を引き起こしたとみられている。地震のような揺れも観測されたが、米国地質調査所(USGS)は崩落によって生じた可能性を示している。
氷河が関係する洪水には、いくつかのタイプがある。今回のように氷河や岩盤の崩落が引き金になるもののほか、氷河湖が決壊して起きる「氷河湖決壊洪水(GLOF)」もある。
氷河が後退すると、その跡に水がたまって氷河湖ができることがある。湖をせき止めているのは、氷河が運んできた岩や土砂などが積み重なった天然の堤防だ。水が堤防を越えたり、堤防が崩れたりすると、大量の水が一気に流れ出し、下流に洪水を引き起こす。今回の災害後も国境付近では新たな湖が形成されており、決壊によるさらなる洪水への警戒が続いている。
エベレスト地域のThame村では2024年8月、GLOFによる洪水が発生した。この災害を解析した研究が2026年8月27日、科学誌「Natural Hazards and Earth System Sciences」に掲載された。研究によると、上流の小さな氷河湖から水があふれ、下流の別の氷河湖に流れ込んだことで、その天然の堤防も壊れた。一つの湖の決壊が別の湖の決壊を引き起こす「連鎖」が起きたことになる。約77万㎥の水が流れ出し、最大流量は毎秒800㎥を超えた。洪水はThame村にわずか22~25分で到達したと推定されている。
地球温暖化によってヒマラヤの氷河が縮小すると、氷河湖が形成・拡大するほか、高山の岩盤や永久凍土が不安定になる可能性がある。こうした変化は、氷河の崩落やGLOFなどのリスクを高めると考えられている。ただし、8月26日の崩落が温暖化によって直接引き起こされたと断定することはできない。氷河の崩落と氷河湖の決壊は仕組みは異なるが、温暖化が進むヒマラヤでは、こうした氷河災害への警戒が重要になっている。

画像提供:U.S. Geological Survey(冒頭の写真はイメージ)

