初期宇宙の巨大ブラックホール、形成過程をシミュレーションで再現

宇宙誕生から数億年しかたっていない時代に、なぜ巨大なブラックホールが存在したのか。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が初期宇宙で見つけた「小さな赤い点(Little Red Dots)」が、この謎を解く手がかりになる可能性がある。

小さな赤い点は、遠い宇宙にある非常にコンパクトで赤く見える天体だ。その正体は議論が続いているが、急速に成長するブラックホールとの関係が指摘されている。ドイツのマックス・プランク天体物理学研究所や東京大学、神奈川大学、千葉大学などの研究者らは、その形成過程をコンピューターシミュレーションで調べた。その研究成果が16日、英科学誌『Nature』に掲載された。

ブラックホールは周囲のガスを取り込んで成長する。しかし、取り込まれるガスから出る光の圧力がガスの流入を妨げるため、取り込み速度には「エディントン限界」と呼ばれる理論上の限界がある。研究チームが初期宇宙の銀河が密集した領域を再現したところ、近くの銀河から強い遠紫外線が届き、星が生まれにくい状態が続いた。そのため大量のガスが蓄積し、通常の星よりはるかに大きな「超巨大な星」に成長した。この星は形成から約200万年後にブラックホールへ崩壊し、太陽の約100万倍の質量を持つ「種ブラックホール」が生まれた。

このブラックホールの周囲には大量のガスが残り、光が外へ逃げにくいほどガスが密集していた。こうした環境では、短期間、エディントン限界を超える速さでガスを取り込むことができる。その結果、ブラックホールは急速に成長し、シミュレーションでは太陽の約3000万倍の質量に達した。さらに周囲に形成された高密度のガス円盤が、小さな赤い点で観測される光の特徴を再現した。

今回の研究は、小さな赤い点が、重い「種ブラックホール」が生まれ、急速に成長する短い段階を捉えたものだと説明できる可能性を示した。ただし、実際の天体でこの形成過程を直接確認したわけではなく、シミュレーションによって観測結果を説明するモデルを示したものだ。さらに、ブラックホールから噴き出すジェットや風の影響など、シミュレーションに含まれていない要素もある。実際の初期宇宙で同じ過程が起きていたかは、今後の観測による検証が必要だ。

JWSTの近赤外線カメラ(NIRCam)が撮影した「小さな赤い点」6天体。 Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Dale Kocevski (Colby College)

(冒頭の写真はイメージ)