小惑星リュウグウに、生命の材料につながる塩水の痕跡を発見

「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰った砂から、過去に塩水が存在したことを示す痕跡が見つかった。さらに、その周辺から生命に関係する窒素化合物も確認された。いったい、リュウグウで何が起きていたのだろうかーー。京都大学などの研究チームによる研究成果が8月27日、科学誌『Nature Astronomy』に掲載された。

現在のリュウグウに液体の水はない。しかし、リュウグウのもとになった天体では、太陽系が生まれたころに水と岩石の反応が起きていたと考えられている。その後、水が失われるにつれて、水に溶けていた物質が濃縮され、濃い塩水が残ったとみられる。今回の試料では、塩の一種である炭酸ナトリウムとともに、アンモニウムを含む粘土鉱物のほか、炭素と窒素が強く結びついた物質や硝酸ナトリウムなどが見つかった。こうした物質の分布から、水が失われる過程で窒素化合物も濃縮されたと考えられる。

では、なぜ窒素化合物が重要なのだろうか。窒素は、アミノ酸やDNA、RNAなど、生命に欠かせない物質に含まれている。研究チームは、リュウグウのもとになった天体で濃縮されたアンモニアなどの窒素化合物が、生命が誕生する前の有機物をつくる反応で、窒素の供給源になった可能性を示している。さらに、窒素が濃縮された塩水では、有機物どうしの反応や、脱水を伴う分子の結合が進みやすくなった可能性もある。

ただし今回の発見は、リュウグウで生命が生まれたことを示すものではない。今回明らかになったのは、生命につながる有機物をつくる材料になり得る窒素化合物が、太陽系初期の小天体に保存されていたことだ。しかも、はやぶさ2が直接採取して持ち帰った試料は、地球の雨や湿気に長くさらされていない。地上では失われやすい塩の情報も調べられるため、太陽系初期にどのような化学反応が起きていたのかを知る手掛かりになる。リュウグウの砂は、地球の生命につながる物質が宇宙でどのように生まれたのかを探る手掛かりを残している。

はやぶさ2が高度約42mから撮影した、非常に高解像度のリュウグウ表面画像

画像提供:JAXA, University of Tokyo & collaborators

(冒頭の写真は、リュウグウの砂の塩鉱物(青色)と粘土鉱物(茶色)の電子顕微鏡擬似カラー画像とアンモニウム分子のイラスト(提供:京都大学))