
北に巨大火山、南の地下に「熱」 火星の南北差は地下深くまで?
エベレストの約3倍 太陽系最大の火山「オリンポス山」
火星には、太陽系最大の火山「オリンポス山」がある。高さは周囲の平原から約26kmあり、これは標高8,848mのエベレストの約3倍。裾野は約600kmにも及ぶ、巨大な
なぜ火星に、これほど巨大な火山ができたのだろうか。オリンポス山では、何度も噴出した溶岩が同じ場所に積み重なったと考えられている。火星には地球のようなプレート運動がないため、火山が移動せず、同じ場所で長期間にわたって火山活動が続いたことが、巨大化した理由の一つとみられている。
火星の地下の状態を推定、南半球地下に「熱」がある可能性
では、火星の地下には今も熱が残っているのだろうか。その手がかりとなる研究が8月26日、英科学誌「Nature」に発表された。
米アリゾナ大学などの研究チームは、NASAのマーズ・グローバル・サーベイヤー、マーズ・オデッセイ、マーズ・リコネッサンス・オービターの3機について、地球の地上局から取得した16年分の精密な追跡データを分析し、探査機の速度や軌道のわずかな変化から火星の重力場(※)の時間変化を調べた。さらに、太陽の重力によって火星がわずかに引っ張られて変形する「
その結果、オリンポス山のある北半球ではなく、南半球の「南部高地」の地下に、マントルが北半球側より約200~400℃高温になっている可能性が示された。南部高地では北半球より地殻が厚く、この厚い地殻が内部の熱を逃がしにくくしている可能性や、マントル内部の対流が関係している可能性が考えられている。では、200~400℃も高いなら、地下にマグマがあるのだろうか。部分的に岩石が溶けている可能性も考えられるが、今回の研究でマグマを直接確認したわけではない。
火星の南北差を知ることが、火星形成を知る手がかりに
今回の研究が示したのは、火星の地表に見られる南北の大きな違いが、地下深くのマントルにも及んでいる可能性だ。オリンポス山と南部高地の熱異常(熱の偏り)が直接つながっていることが分かったわけではない。また今回の研究は、現在も火星で火山が噴火していることを示すものでもない。それでも、北半球には過去の火山活動が生み出した巨大火山があり、南半球の地下には周囲とは異なる熱の状態が残っている。なぜ火星にこのような南北差が生まれたのかを探ることは、火星がどのように形成され、内部の熱を失ってきたのかを知る手がかりになりそうだ。
【参照】
※重力場…重力が作用している空間。火星の重力場を調べることで、地下の質量分布や内部構造を推定できる。
(冒頭の写真:火星北半球のオリンポス山。太陽系最大のこの火山とは別に、南半球の地下には周囲より高温と推定される領域がある可能性が示されている。)

