1年間冷凍保存したニジマスからの繁殖に成功

東京海洋大学の吉崎悟朗教授は、1年間冷凍保存したニジマスから取り出した精原細胞をヤマメに移植することでニジマスの卵と精子を得て、正常に繁殖させることに成功したと発表した。

雄のニジマスをまるごと生きたままマイナス80度で凍結し、1年後に解凍した個体から精巣を取り出して調べたところ、精原細胞(精子の元になる細胞)が生きていることを発見。これを、ふ化直後のヤマメの稚魚に移植すると、このヤマメが雄の場合は冷凍魚に由来する機能的な精子を、雌の場合は冷凍魚由来の機能的な卵が得られた。

一般的な絶滅危惧種の遺伝子資源の保存方法として、卵や精子、さらには胚の凍結保存が挙げられる。しかし、魚類の卵はサイズが大きく、凍結保存可能な哺乳類の卵に比べて直径で10~80倍、体積はその3乗になる。しかも脂肪分に富むため、魚類の卵や胚の凍結保存はまったく進んでいなかった。そのため、絶滅危惧種等の貴重な個体が疾病や飼育施設の事故等で死んでしまっても、その遺伝子資源は諦めるしかなかった。

今回の方法を用いれば、貴重な個体が死ぬ前に1匹丸ごと冷凍保存することで、いつでも次世代を得ることができる。また、たとえその種が絶滅してしまった場合でも、現存する近縁種を使って絶滅種を復活させることも可能となる。

今後の展開として、米国で絶滅の危機に瀕しているベニサケの地域集団を保存するプロジェクトや、山梨県西湖で再発見されたクニマスの精巣凍結プロジェクトが進行中だという。

画像提供:東京海洋大学