15年間の小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」運用を終了

JAXA、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」の運用終了を発表

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は15日、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」の運用終了を発表した。IKAROSは、2010年5月21日に金星探査機「あかつき」と共に打ち上げられ、世界で初めてソーラーセイルおよびソーラー電力セイルの実証に成功した。

IKAROSの開発背景には、燃料を使わずに宇宙を航行する方法を探るという目的があった。太陽の光の圧力をセイル(帆)に受けて進むソーラーセイル(宇宙帆船)は燃料を積む必要がなく、長期の宇宙探査に適している。この技術を宇宙で試すためにIKAROSは設計され、14メートル四方の薄い膜状のセイルを宇宙空間でスピンの遠心力を用いて展開し、太陽光を受けての加速の実証に成功した。またセイルに貼り付けられた薄膜太陽電池で発電し、電力供給も実現した。さらに、液晶デバイス等によってセイルの向きを調整する軌道制御を行い、ソーラーセイルによる航行技術の獲得にも成功した。

これらの世界初の快挙を達成した後、2011年12月に姿勢制御のための推進剤がほぼ尽き、冬眠モード(シャットダウン状態)に入った。冬眠明けにIKAROSからの電波を受信するには、冬眠中の軌道や姿勢を正確に予想する必要がある。2015年4月23日に4回目の冬眠明けの電波を受信し、同年5月21日に受信できなくなって5回目の冬眠に入り、次の冬眠明けは2015年冬と予測されていた。しかしそれ以降、IKAROSの電波は受信できなくなっており、今回の運用終了となった。

IKAROSの成果は、その後の宇宙探査に活かされている。例えば、超小型ソーラーセイルによる姿勢・軌道統合制御の実証プロジェクト「PIERIS」や、小惑星探査機「はやぶさ2」の拡張ミッションでは、太陽光圧を利用した姿勢制御が行われている。また、薄膜太陽電池パドルを用いたソーラー電力セイルの開発も進められており、外惑星探査機「OPENS」プログラムなどでの応用が構想されている。IKAROSの運用は終了しても、その技術と成果は次世代の宇宙探査へと引き継がれていると言えよう。

写真提供:JAXA