
赤色レーザー光で植物の成長を促進、次世代型光源となるか 東大
東京大学は20日、植物の室内栽培において、従来用いられていた発光ダイオード(LED)に代えて赤色レーザーダイオード(LD)を用いたところ、顕著な成長促進が確認されたと発表した。光エネルギーの変換効率を最大化する高精度な栽培用光源として、植物工場や宇宙農業への応用が期待できる。この研究成果は国際学術誌に掲載された。
世界的な人口増加や都市化のために都市部での食料生産のニーズが高まっている。また、気候変動による異常気象が従来型の農業にとって大きなリスクとなってきている。こうした背景から、天候に左右されず都市部で作物を栽培できる植物工場が注目を集めている。
植物工場では太陽光の代わりに人工光によって植物を育てるため、光の質と量の最適化が生産性の鍵となる。植物は葉緑体の中のクロロフィルという色素が光のエネルギーを吸収して光合成を行うが、特に光合成を活性化するのは赤色光(波長640~680nm)である。これまで人工光源はLEDが主流だったが、これは広い波長帯域(半値幅:20~50nm)で発光するという特徴がある。
東京大学の研究グループは10nmという非常に狭い波長帯で光を出すLDに着目した。研究グループは、さまざまな赤色LEDおよびLDをタバコの葉に照射して、光合成速度・気孔の開き方・水の利用効率などを測定したところ、LD660nm光を当てた場合が最も光合成が活発で、同じ波長域のLED664nm光よりも約19%高い光合成速度が観察された。これは、LD660nm光が光合成を効率よく活性化する「無駄のない光」であるということだ。
また、LEDとLDでタバコ、シロイヌナズナ、レタスの3種類の植物に12日間連続で照射して生育させたところ、LDの方が乾燥重量、葉面積ともに1.3~2.3倍という高い値を示した。さらにLDでは光合成に不向きな光を出すことがないので発熱も少なく、光によるダメージ(光阻害や黄化)も少なかった。
今回の研究結果により、LDが植物工場において空間効率や栽培環境の自由度を高める次世代型光源となりうることが初めて示された。今後は、青色など他波長のLDを組み合わせたマルチスペクトル照射や、トマトなど多様な作物への展開など、レーザーを活用した持続可能な農業の実現を目指すとしている。

画像提供:東京大学(冒頭の写真はイメージ)