
宇宙は予想より均一だった? DESが迫る「宇宙論のズレ」
宇宙は138億年前のビッグバンから広がり続けている。この宇宙の進化を説明する理論が「標準宇宙論」だ。宇宙には目に見えない「ダークマター(暗黒物質)」と、宇宙膨張を加速させる「ダークエネルギー」が存在すると考えられている。ところが近年、「現在の宇宙」での銀河の集まり方が、理論予測よりやや弱い可能性が議論されてきた。今年2月に国際研究チーム「ダークエネルギーサーベイ(DES)」が、6年間の観測データを用いた大規模解析結果を公表したことで、この“宇宙論のズレ”が改めて注目を集めている。
DESは、南米チリのブランコ4メートル望遠鏡と超高性能カメラ「DECam」を使い、空全体の約8分の1にあたる約5000平方度を観測した。研究チームは天の川銀河の星やガスが少なく、遠方銀河を観測しやすい南天領域を中心に、約1億4000万個の銀河を解析し、銀河の分布や「重力レンズ効果」を調査した。一方、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「プランク」は2009年〜2013年に、ビッグバン約38万年後の宇宙から届く「宇宙背景放射」を観測し、「現在の宇宙では、もっと強く銀河が集まっているはずだ」という予測につながる結果を公表していた。このプランクの観測データは、現在の「標準宇宙論」における重要な基準となっている。しかしDESや、遠方銀河のゆがみから宇宙の物質分布を調べる「KiDS」など他の観測では、実際の宇宙は予測ほど物質の偏りが強くない傾向が繰り返し示されてきた。この食い違いは「S8問題」と呼ばれ、議論の的になってきた。
2月に公表されたDES解析では、標準宇宙論を完全に否定するほどではないものの、「宇宙の構造形成が理論予測よりやや弱い」という傾向が、高精度で再確認された。現在でも観測誤差などの可能性は議論されているが、一部の研究者の間では、新しい物理法則が隠れている可能性も指摘されている。
もしこのズレが観測誤差ではないなら、宇宙論の修正が必要になるかもしれない。現在は、ダークエネルギーが時間とともに変化する可能性や、ダークマターの未知の性質、さらには重力理論そのものの修正などが議論されている。今後は、米国の「ベラ・ルービン天文台」や欧州宇宙機関の宇宙望遠鏡「ユークリッド」による次世代観測で、この“宇宙論のズレ”の正体解明が期待されている。

(冒頭の写真はチリのブランコ4m望遠鏡と天の川)

