「未来のエネルギー」核融合実用化に向け、日本のスタートアップが挑戦 

原子力発電とは異なる「フュージョンエネルギー」。その仕組みと特徴

太陽のように核融合反応でエネルギーを生み出す「フュージョンエネルギー(核融合エネルギー)」の実用化に向けた動きが、近年、日本でも加速している。

核融合は、原子核を分裂させる現在の原子力発電とは異なり、軽い原子核を融合させてエネルギーを取り出す。燃料の1つである重水素は海水中に豊富に存在し、核分裂炉のような使用済み核燃料を生じないのも特徴だ。核融合でも炉の材料は中性子を受けて放射性を帯びるため、放射性廃棄物がゼロになるわけではないが、核分裂炉のような高レベルで、長期間にわたって放射能が残る廃棄物を生じないとされる。

大型実験装置「JT-60SA」と日本のスタートアップの挑戦

その実現に向けて重要なのが、茨城県那珂市の大型実験装置「JT-60SA」だ。日本と欧州が共同で建設した世界最大のトカマク型超伝導プラズマ実験装置で、2026年3月13日、プラズマ加熱実験に向けた統合試験運転の開始が発表され、年内の加熱実験開始を目指している。トカマク型では、1億度を超えるプラズマを強力な磁場で閉じ込める。JT-60SA自体が発電するわけではなく、プラズマを安定して制御する技術などを研究し、将来の発電炉につなげる。

核融合の方式は、磁場でプラズマを閉じ込める「磁場閉じ込め方式」だけでなく、燃料を瞬間的に圧縮する「慣性閉じ込め方式」もある。またJT-60SAのトカマク型と同じ磁場閉じ込め方式には、らせん状の磁場を使う「ヘリカル型」もあり、日本のスタートアップHelical Fusionが実用化を目指している。一方、慣性閉じ込め方式の1つがレーザー核融合で、大阪大学などの研究者が設立したスタートアップEX-Fusionが挑戦している。

進む要素技術の開発と実用化に向けた課題

「方式」だけでなく、それを支える技術の開発も進む。浜松ホトニクスはEX-Fusionとレーザー技術を開発し、2025年7月31日にはレーザーを模擬燃料ターゲットに1時間連続照射する実験に成功した。京都フュージョニアリングは、プラズマ加熱や燃料サイクル、核融合で生じる熱を回収する技術などを開発している。超電導技術では、フジクラが30年以上にわたり開発してきた高温超電導線材・コイルの核融合への応用を進めている。また東芝は、フランスで日本や欧州などが共同建設を進める国際的な大型核融合実験炉「ITER(イーター)」向けの超伝導コイルを製作し、2026年8月25日にマイナス269度での通電試験に成功した。

日本政府は2030年代の発電実証を目指しており、2026年8月10日には、その具体的な進め方を検討する委員会が始まった。ただし、発電実証とは実際に電気を作れることを確認する段階で、2030年代に商用発電所が普及するという意味ではない。

長年「未来のエネルギー」と呼ばれてきた核融合は今、「核融合を起こせるか」から「発電所として安定して動かせるか」へ課題が広がっている。トカマク、ヘリカル、レーザーといった異なる方式の実用化に挑む企業や、それを支える要素技術を担う企業が、未来の発電に向けた競争を本格化させている。 

画像提供:Michel Maccagnan / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(核融合実験装置「JT-60SA」。1億度を超えるプラズマを磁場で閉じ込めるトカマク型で、将来の核融合発電炉に向けた研究が進められている=茨城県那珂市)