猛暑の死亡をエアコンはどれだけ減らす? 温暖化で高まる熱リスク

暑さは、単に「つらい」だけではない。高温の環境では体温調節が追いつかず、体内に熱がこもる。重症化すると意識障害などを起こし、命に関わる。特に高齢者は暑さを感じる機能や体温調節機能が低下しているため、注意が必要だ。日本では2024年、人口動態統計で熱中症による死亡者が2152人に上った(2025年の確定値はまだ公表されていない)。では、温暖化によって極端な暑さによる死亡リスクはどれほど高まり、エアコンにはどの程度の効果があるのだろうか。

英科学誌『Nature』の姉妹誌『Nature Health』で9月7日に掲載された研究では、欧州34カ国を対象に、2022年にみられた極端な暑さと「熱関連死」(熱中症だけでなく、暑さの影響によって起こる死)が重なる事態が、産業革命前と比べてどれほど起こりやすくなったかを調べた。その結果、南欧ではこのような事態が産業革命前と比べて26.5倍起こりやすくなっていた。この倍率は欧州平均のおよそ10倍で、特に大きかった。ただし、死亡者数が26.5倍になったという意味ではない。地域や年齢によっても差があり、暑さによるリスクは一様ではない。

米国では9月9日、米海洋大気庁(NOAA)が米国本土48州の2026年夏(6〜8月)の平均気温が観測史上最も高かったと発表した。では、エアコンは暑さからどれだけ命を守るのか。同誌で8月31日に掲載された別の研究では、米国本土の約3000万人について、2010〜2020年の死亡記録を分析した。その結果、家庭用エアコンによって、熱関連死が年間5267人回避されていたと推定された。これは実際に「エアコンで救われた人」を数えた数字ではなく、統計的な推定値だ。エアコンがあまり普及していない地域では、普及が進むことで熱関連死のリスクが低下した。一方、普及率がすでに高い地域では、さらに普及しても効果は頭打ちになる傾向がみられた。

日本でも、エアコンの効果と副作用を調べた研究がある。関西7都市を対象とした研究で、2023年に環境・健康分野の国際学術誌『Environment International』に掲載された。将来の温暖化を想定した結果、エアコンによって熱関連死の36〜47%を回避できると推定された。一方、室外機から放出される熱で都市の気温がわずかに上昇し、その影響で熱関連死が3.1〜3.5%増えるとも推定された。エアコンには周囲を暑くする側面もあるが、暑さから命を守る効果の方が大きいことが示された。

(冒頭の写真はイメージ)