類人猿にも他者の心を読む能力? 京大

京都大学野生動物研究センターの研究グループは、類人猿が他人の考えを理解して、次の行動を予測する力があることを実験で明らかにした。7日、米科学誌『サイエンス』に掲載された。

今回、研究グループが注目したのは「誤信念」という「現実の状況とは異なる状況を頭の中でイメージしている」状態。例えば、Aという人が引き出しにペンを入れて外出し、Aの外出中に他人がそのペンを取り出して、ペンを筆入れに移したとしよう。帰宅したAがペンを取ろうとするとき、Aが開けるのは筆入れか、引き出しか――。この問いに対して、実際ペンは筆入れに入っているにもかかわらず「Aが引き出しを開けるだろう」と予測できるのは、「Aが『ペンは引き出しに入っている』と信じている」と理解できるためだ。このAの考えの状態を「誤信念」と呼ぶ。従来、他人に対して、その相手が誤信念をもっている状態だと理解できるのは、ヒトでも4歳以降だということが分かっており、ヒト特有の高度な認知能力とされてきた。

今回研究グループは、類人猿がこの誤信念を理解して相手の行動を予測する様子を観察した。誤信念が生じる状況を演じた動画(実験1)(実験2)を作成し、類人猿40個体に見せて視線の動きを記録。誤信念に基づいた予測として正しい場所を注視する個体が半数以上と、統計的に有意な結果となり、類人猿にも高度な認知能力があることが示唆された。

研究グループは、「どのようなメカニズムで誤信念に基づいた予測をしているのか、議論の余地がある」とし、類人猿もヒトと同様に他者の心を想像する力がある可能性もあるが、ヒトとは異なり、他者の行動パターンから予測している可能性もあるため、今後検証する必要があるとしている。

画像提供:京都大学野生動物研究センター
(冒頭の写真は、2つの実験を合わせた平均の結果)

 
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