恐竜の化石から、赤血球やコラーゲンを発見

7500万年前(白亜紀)の恐竜の骨化石から、赤血球やコラーゲン繊維と思われる柔らかい組織が発見された。しかも、100年以上前に発掘されて保存状態が良くない化石からだ。これまで、非常に保存状態が良い化石からしか発見されておらず、本当に軟組織の成分なのかという論争もあった。今回の方法は、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのセルジオ・ベルタッツォらの研究グループが、電子顕微鏡と質量分析法を組み合わせることで実現した。9日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズで発表した。

「たんぱく質分子は比較的短期間で分解され、400万年以上は保存されない。よって、7500万年前の恐竜の化石には、元のたんぱく質の一部しか保存されず、構造全体は保持されない」とこれまで長い間考えられてきた。しかし、白亜紀の恐竜化石8点を電子顕微鏡で調べたところ、核のある赤血球とみられる構造や、ロープ状にねじれたコラーゲンの特徴的な分子構造が見つかった。さらにそれらを質量分析法で調べると、赤血球とみられる構造から得られた分析結果が、現在の鳥類であるエミューのものと驚くほど似ていることや、コラーゲンのような分子構造からはコラーゲンを構成するアミノ酸の断片が検出された。

電子顕微鏡や質量分析法を用いることで、従来は調査対象とされなかった保存状態が良くない化石からも有益な調査結果が得られることが明らかになった。大昔に絶滅した動物について、多くのことがわかるようになるのでは、と期待される。

画像提供:ネイチャー・コミュニケーションズ