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高性能なリチウムイオン蓄電池 汎用元素を負極材料にして開発へ 

高性能なリチウムイオン蓄電池 汎用元素を正極材料にして開発へ

東京電機大学の藪内やぶうち直明准教授らは、電子機器や電気自動車などで普及が進んでいる「リチウムイオン電池」の正極材料として、チタンやマンガンといったありふれた元素で構成される新しい酸化物の合成に成功した。安価で高性能な電池を開発できる可能性がある。英オンライン科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に23日掲載された。

近年では電子機器用の小型電源(最大10 Wh)だけでなく、電気自動車用の大型電源(最大2万 Wh)としても、電気エネルギーを蓄えるためにリチウムイオン蓄電池が利用されている。しかし、既存の内燃機関を用いた自動車に比べて電気自動車の走行距離は短く、本格普及には蓄電池の高性能化が必要とされている。

電池は、正極と負極の組み合わせが電池の性能を左右する。次世代リチウムイオン電池の負極材料は、従来技術を大きく上回るものが研究されており、正極材料としては「酸素」が注目されている。空気中の酸素を利用する「リチウム・空気電池」の性能は高いが、構造が従来と大きく異なるため、実用化に課題がある。そのため、固体の「酸化物イオン」を用いることで、従来と同じ構造のまま空気電池に匹敵する性能を目指す研究が行われている。

藪内准教授らは、昨年度までにニオブという元素を正極材料に用いることで高性能が得られることを確認していたが、ニオブは高価であるという課題があった。そこで、ニオブ系材料の反応機構を詳細に解析し、ニオブをチタンに代替したチタン・マンガン系材料を合成したところ、ニオブ系材料や既存の電気自動車用のリチウム電池を越える性能を持つことが分かった。また、この反応は通常の材料で進行する遷移金属イオンの酸化還元反応ではなく、特異的にチタンとマンガンと結合している酸素の酸化還元反応であることも分かった。

このような酸素の酸化還元反応を利用することで、さらなる高性能の電極材料が開発できる可能性もある。また、安価なチタンを用いた高性能蓄電池材料の実現は、電気自動車の走行距離の増加だけではなく、リチウムイオン電池の新たな市場の開拓にもつながると期待されている。

画像提供:東京電機大学

 
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