奄美群島国立公園

「奄美群島国立公園」が誕生! 世界遺産登録へ一歩前進

鹿児島県の奄美群島が7日、国内で34カ所目の国立公園に新たに指定され、「奄美群島国立公園」が誕生した。固有の生態系や、傑出した景観などが評価された。同地域は世界遺産登録の候補地にもなっており、今回の指定で、登録までの最初のステップをクリアしたことになる。2018年夏の登録を目指している。

34カ所目の国立公園「奄美群島」

奄美群島は鹿児島県の南部に位置し、奄美大島、徳之島、沖永良部島など8つの島嶼とうしょで構成される地域。この地域に広がる国内最大規模の亜熱帯照葉樹林は世界的にも数が少なく、固有動植物および希少動物、世界有数の速度で今も隆起するサンゴ礁段丘などの多様な自然環境を有していることから、2010年度に環境省が実施した国立公園総点検事業において高い評価を受け、新規の国立公園の指定を行う候補地として選定されていた。

今回国立公園として認定された理由は、近年、照葉樹林、干潟、サンゴ礁の景観に対する関心の高まりもあり、多様な生態系が複合的に一体となっている本地域は日本を代表する傑出した景観を有する点が評価されたため。国立公園の指定には、景観だけではなく、規模や自然性、大人数による利用の可否、地域社会の理解の有無も指定要領に入っており、同地域は要件をすべて満たした。

今後、国立公園として「生命のにぎわう亜熱帯のシマ~森と海と島人の暮らし~」をテーマに、琉球弧の形成の歴史を示す海岸等の優れた景観を保全し、地史を反映して進化をとげた固有の動植物等で構成される亜熱帯照葉樹林生態系を積極的に保護していくとしている。また、質の高い自然体験や環境学習の場と機会を提供することにより、地球の生物の多様性の確保に寄与し、地域の暮らし・営みと自然環境のバランス維持に貢献する国立公園を目指す。

世界遺産への歩み

奄美群島はユネスコの世界遺産登録の候補地となっている。2003年の環境省と林野庁による「世界自然遺産候補地に関する検討会」では、世界遺産の登録基準を満たす可能性の高い地域として選定。2009年の環境省の「奄美地域の自然資源の保全・活用に関する基本的な考え方」では、奄美地域の自然資源の保全や活用にあたっては「国立公園」の指定が有効であるとして早期の国立公園指定を目指していた。

今回の国立公園指定により、世界遺産登録の最初のステップをクリア。今後、ユネスコへの推薦書の提出、国際自然保護連合による現地審査、最後に世界遺産委員会の審査を経てようやく世界遺産登録となる。2018年夏の登録を目指している。

世界遺産に登録されると、日本で4カ所目の世界自然遺産として、観光業の活性化や農産物などのブランド力向上につながることが期待される。一方で、観光客の増加により自然環境への負荷の増大が懸念されるため、世界遺産の登録には自然の資質が一定の水準に満たしていることに加え、法律や制度によって自然保護の措置が取られていなければならない。

自然保護措置については、これまで鹿児島県や地元市町村ではアマミノクロウサギ等希少野生生物の交通事故対策やノイヌ・ノネコ対策、サンゴ礁の保全・再生への取り組みを推進。また環境省の奄美野生生物保護センターでは、絶滅のおそれのある野生生物の保護増殖事業、希少野生生物を脅かすマングースの防除事業などに取り組んできた。1月23日に奄美市は世界遺産登録に向けて市民の理解と協力を要請する文章を市のホームページに掲載。現在、市で取り組んでいることを伝えると同時に、動植物を大切にすることやごみのポイ捨ての禁止などを市民に呼びかけた。

(写真はイメージ)

 
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