JICA初 風力発電システム整備 トンガと無償資金協力を締結
国際協力機構(JICA)は2日、南太平洋の島国であるトンガ王国の首都ヌクアロファにて、「風力発電システム整備計画」を対象に、同国政府と21億円を限度とする無償資金協力の贈与契約を締結した。首都があるトンガタプ島に1.3メガワットの風力発電設備と系統安定化装置(蓄電設備)、送配電線網への系統接続設備などを整備し、2019年4月に完成予定。日本の無償資金協力事業として初の風力発電システムの整備となる。
同国はエネルギー資源に乏しく、93%以上を輸入したディーゼル燃料での発電に依存している。そのため、国際的な石油価格の変動など外部要因の影響を受けやすい。また、島国であるため輸送コストも割高で、エネルギー安全保障上の脆弱性を抱えている。さらに、ディーゼル燃料は同国における主要な温室効果ガスの排出源でもある。そこで、同国政府は2020年までに電力供給の50%にあたる27ギガワット時を再生可能エネルギーで賄うことを目標に掲げ、電力供給源の多様化に取り組んでいる。
しかし、代表的な再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電で得られる電力は、天候に左右されるために、安定しているとは言えない。電力供給が不安定になると、電灯がちらついたり、突然の停電を引き起こしたり、さらには精密機械が壊れる原因ともなり得る。そこで、電力の安定供給を損なわずに再生可能エネルギーの導入を図るため、日本に技術的な協力を求めた。その第一弾として、太陽光発電施設とマイクログリッドシステム(電源供給の安定化を図るシステム)を導入する無償資金協力を日本に要請。これらは2015年3月にトンガ側に引き渡され、現在も安定稼働している。
それでもまだ目標の50%に届かないため、今回、改めて風力発電についても日本に要請がなされた。風力発電システムは古くから欧米がリードしてきたが、昨年、最大瞬間風速84.9m/sの超大型サイクロン「ウィンストン」が同国付近を通過するなど、台風対策が必須である点も考慮の対象になり、台風大国である日本の技術が同国の目にとまったようだ。
先週、トンガのシアオシ・ソバレニ副首相は、「私たちが使っている電力の11%が再生可能エネルギーだ」と記者会見で述べた。今回の計画に沿って風力発電システムが整備されれば、同国の電源構成における再生可能エネルギーの割合が6%程度上昇する見込み。その分、ディーゼル燃料の使用量を抑えることができ、温室効果ガス排出量の削減にも貢献すると期待されている。
画像提供:トンガ電力公社