持久力の高さは記憶力向上に関係する 筑波大

持久力の高さは記憶力向上に関係する 筑波大

持久力が高い人ほど、「パターン認識能力」という正確な記憶に不可欠な能力が優れていることを、筑波大学体育系 征矢英昭教授らの研究グループが明らかにした。この能力は、脳の海馬かいばにある「歯状回しじょうかい」と呼ばれる領域が関わっており、習慣的な運動によって新しい神経細胞を作る能力が高められる可能性があるという。11日、英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載された。

最新の研究から見える脳の姿

運動が、体力の維持・増進だけでなく脳の活動にとっても有益であることが最近の研究で明らかになっている。これまでの研究から、持久力が高い子どもや高齢者は、同世代で持久力の低い人よりも、脳にある海馬と呼ばれる領域が大きく、記憶力が優れているということが確認されている。海馬は学習や記憶に関わっており、海馬の中でも歯状回という領域は、「似たような出来事を区別して正確に記憶する能力(パターン認識能力)」を担っている。

この歯状回は、生涯を通して新しい神経細胞が産生される、数少ない脳領域であることが知られている。長い間、脳では神経細胞は減少するのみで、再生することはないと考えられてきた。しかし、歯状回などのごく限られた領域では、新しい神経細胞が生まれ、既存の神経回路に組み込まれることで、学習・記憶能に重要な役割を果たしているという。持久力と記憶力の関係は、歯状回で新しい神経細胞が産生されることと関わっていると研究グループは考えた。

ユニークな記憶テストによる検証

研究グループは、習慣的な運動によって、歯状回で新しい細胞が増加し、「パターン認識能力」が高くなると仮説を立て、男女75人に特殊な記憶テストを受けてもらい、検証を行った。テストでは、192枚の写真を2秒ずつ見たあとに、256枚の写真1枚ずつに対して、最初に見た192枚の写真と「全く同じ写真である」、「似ているが全く同じではない」、「初めて出てきた写真」の3択で回答。似ている写真は、似ている度合いで高・中・低の3種類に分類し、それぞれの正解率と持久力の高さとの関係を調べた。

実験の結果、より持久力のある人たちの方が正解率が高く、特に「似ているが全く同じではない」写真を正確に区別して回答できていたことが分かった。実験参加者のアンケート結果も踏まえると、日常での活動量が多い人は、最大酸素摂取量が多く、それが高い記憶力と関連しているという結果が得られたという。日常の身体活動を通して持久力を高めることで、歯状回の新しい神経細胞が増え、記憶力向上につながることが示された。

研究グループは今後、最新の脳機能計測法を使って、持久力と記憶力の関係の脳内メカニズムの検証を計画しているという。さらに、子どもや高齢者でも同じような傾向が見られるのか、また、運動選手のような持久力の高い人の記憶力なども今後の検討課題だとしている。

(写真はイメージ)

 
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