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世界遺産を訪れる 長崎「旧グラバー住宅」

世界遺産を訪れる 長崎「旧グラバー住宅」

旅行ガイドブックに取り上げられている「観光名所」。訪れる意味と価値があるとされるからこそ、その位置をものにしているわけだが、そういった名所に決まってつけられている「お墨付き」の一つが世界遺産登録だろう。ユネスコ(国連教育科学文化機関)によると、「世界遺産とは、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきたかけがえのない宝物」のこと。1972年の第17回ユネスコ総会で採択された世界遺産条約の中で定義されている。

そんな“かけがえのない宝物”の一つが、日本の西端、長崎県長崎市にある「旧グラバー住宅」だ。

明治維新後、炭鉱の経営や麒麟麦酒(現キリンホールディングス)の基礎を築くなど、経営者として日本の近代化に大きく貢献したことで知られる、トーマス・ブレーク・グラバー。1838年にスコットランドで生まれ、21歳のときに開港と同時に長崎を訪問、グラバー商会を立ち上げた。当初は生糸や茶の輸出、その後幕末の時代の流れに着目し、武器・弾薬商人として成功。日本の商業鉄道の開始よりも早く蒸気機関車の試走を行い、海に囲まれた長崎の街を造船の街として発展させた。森有礼や伊藤博文の海外渡航・留学を手助けした人物としても知られている。

長崎市内にある、長崎を代表する観光名所「グラバー園」内にある、グラバーが住んだ美しい洋館、通称「旧グラバー住宅」を訪れた。チューリップ、ツツジ、バラ……など、四季折々の花々を愛でることができることでも有名な庭園だ。筆者が訪問した6月末には、梅雨に濡れた紫陽花が色鮮やかに咲き誇り、訪問客を出迎えた。

 

世界遺産を訪れる 長崎「旧グラバー住宅」

グラバー園は、長崎港を望む南山手の高台に位置し、長崎市内を一望できる最も見晴らしがいい観光名所である。国指定重要文化財の旧グラバー住宅・旧リンガー住宅・旧オルト住宅を核に、市内に点在していた6つの明治期の洋館を移築復元。年間100万人以上の観光客が訪れている。

旧グラバー住宅は、1863(文久3)年に建てられた。現存する日本最古の木造洋風住宅として、1961(昭和36)年に国の重要文化財として指定されている。2015年には、「九州・山口の近代化産業遺産群」の構成資産の一つとして日本で19番目の世界遺産に登録されることとなった。建物の設計と庭園の配置をグラバー自身が手掛け、建築を天草の棟梁小山秀之進が担当。瓦葺きの扇形の屋根やレンガ造りの煙突、天井付きの石畳の低いベランダが特徴の和洋折衷の木造建築を目にすると、日本唯一の外交の窓口として西洋の文化を受け入れた時代の長崎にタイムスリップしたような気分になる。この建物は、当初グラバーが商売の相手を応接する場所として使われていたそうだ。

世界遺産を訪れる 長崎「旧グラバー住宅」

グラバー住宅の中に足を踏み入れてみると、グラバーが住んでいた当時の様子が残されている。写真は、グラバーとその妻ツル。ツルは、長崎を舞台に恋愛の悲劇を描いたプッチーニのオペラ「蝶々夫人」のヒロイン蝶々さんのモデルとして有力視されている。

客用寝室の様子。グラバー氏が愛用していたステッキ(犬の頭部の彫刻がある)、当時使っていた望遠鏡、「覗(のぞき)」という、明治初期に箱の中に版画をはめ込んでハンドルを回し、絵を覗き見た機械などが展示されている。

【施設情報】
グラバー園
長崎県長崎市南山手町8-1
http://www.glover-garden.jp/
TEL:095-822-822
営業時間:8:00~18:00
入場料:一般610円、高校生300円、小中学生180円