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フランスの「最も美しい村」(3)プロヴァンス―リュベロン地区とゴルド村

156ある美しい村の多くは南西部に集中しているが、次に多いのが南フランスだ。アヴィニョンとエクス・オン・プロヴァンスの間に位置するリュベロン自然公園内には、5つの美しい村がある。アヴィニョンからのツアーを利用すると、複数の「美しい村」を同時に訪れることができる。今回は、リュベロン地区とその中にある「美しい村」のひとつ、ゴルドを紹介したい。

その昔、プロヴァンスは現在のようにフランスの一地域ではなく、独立した1つの国だった。そのためプロヴァンス語が発展し、地名などにもその名残が見られる。「リュベロン」というのは、プロヴァンス語で「狼の山」という意味だ。狼が多数出没したことからその名が付けられた。そして、狼が人家に侵入するのを防ぐために、石を縦に積み上げて外塀で囲うという工夫をしていたそうだ。

フランスの「最も美しい村」 (3)美しい村の宝庫プロヴァンス――リュベロン地区とゴルド村
狼の侵入を防ぐために作られたという石造りの塀

リュベロン自然地区は広大な敷地の中に多数の村と農地が広がっており、肥沃な土地を利用してりんご、桃、さくらんぼ、レモン、ブドウ、かぼちゃなどの果物や野菜、プロヴァンス地方特産のラベンダーなどがここで栽培されている。ラベンダーには、標高の低い場所でも栽培できる品種改良されたものと、標高の高い場所でしか栽培できない天然のものと2種類があるという。前者は芳香用に、後者は医療用に用いられる。刈り取られるのは7月半ばだそうで、ラベンダー畑の風景を楽しみたければその前に訪れるのがおすすめだ。

フランスの「最も美しい村」 (3)美しい村の宝庫プロヴァンス――リュベロン地区とゴルド村
リュベロン地区に広がる農地

さてリュベロン地区には、山の傾斜に沿って形成された村が多くあるが、それはこの地域の宗教の歴史に由来する。カトリックとプロテスタントの二派が隣り合わせに存在し、宗教戦争が度々起こっていたのだ。そのため、周辺で何が起きているのかすぐに情報を得られるように、また敵が侵入するのを少しでも防ぐため、山の上に村を作ったという。

リュベロン地区にある「美しい村」のひとつ、ゴルドはビューポイントから村全体を望むことができる。同地区独特の典型的な石造りの家や塀が、山の傾斜に沿って立ち並ぶさまは圧巻だ。また、今では家の修復にセメントを用いているそうだが、往時の建築の風情を残すために、セメントを使っていないかのような工夫がされているという。