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豪雨のシミュレーション手法を開発 水稲減収リスク軽減に期待

豪雨のシミュレーション手法を開発 水稲減収リスク軽減に期待

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、豪雨のパターンのシミュレーション手法を開発し、冠水などによる水稲減収のリスクを評価する手法を開発した。この手法により、将来の豪雨の強度や発生頻度の変化を推定することができ、これを農地の排水計画や豪雨災害の減災に役立てることが期待される。

近年、豪雨による水害がさまざまな地域で発生しており、日本の水田では年間平均43万ヘクタールの水害が発生、被害金額は最大数10億円にも達している。これらの水害の主な原因の一つが豪雨で、気候変動によって今後も激しい豪雨が発生する可能性が危惧されている。豪雨が発生した際、水田では早めの排水により冠水被害を低減できるが、将来の気候を予測することは今まで困難だった。

農研機構ではこの問題を解決すべく、特定の地域で発生しうる豪雨の強度と発生頻度を推定する方法を開発。複数の気候変動の予測結果をもとに、50%の確率で発生する水稲の平均的な被害や、10%の確率で発生する最大規模の被害を定量的に推定できるようにした。またその結果を用いて水田域の冠水被害を予測し、水稲減収の量でわかりやすく評価する方法を提案。この手法は全国の低平な水田域に適用でき、石川県加賀三湖地区では最大規模の被害量が現在の2381トンなのに対して、今世紀末には3047トンと現在の1.28倍になると予測された。

今後この手法を用いて、水田域での安全性の高い排水計画を検討することが期待される。また農地浸水ハザードマップの作成や、ため池防災、畑地の土壌流亡などの豪雨災害の予測にも活用できると見られている。

豪雨のシミュレーション手法を開発 水稲減収リスク軽減に期待
10年に1回の豪雨の推定強度と発生頻度。現在は平均220mm、最大規模450mmだが、近未来は平均259mm、最大規模560mmと強度が増大している

豪雨のシミュレーション手法を開発 水稲減収リスク軽減に期待
石川県加賀三湖地区の、ある豪雨による冠水分析の結果

画像提供:農研機構(冒頭の写真はイメージ)