メコン川流域で157種の新種発見、環境保護へ警鐘 WWF

メコン川流域で157種の新種発見、環境保護へ警鐘 WWF

世界自然保護基金(WWF)ジャパンは12日、メコン川での調査の結果、2017年に157種の新種が発見されたと報告書にまとめ発表した。WWFが調査を開始した1997年以来の新種の数は2681種となった。しかし、近年のインフラ開発や天然ゴム園の拡大などにより環境破壊が進んでおり、早急な保護対策が求められている。

メコン川は東南アジア最長の大河で、サバンナから熱帯雨林まで多様な生態学的景観が見られ、生物多様性の宝庫としても知られている。WWFは世界的に重要な生態系の一つとして保全活動を進めている。2017年の1年間にカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムのメコン川流域で行った生物調査で発見された新種(亜種を含む)の生物は、哺乳類3種、魚類23種、両生類14種、爬虫類26種、植物91種の計157種となり、報告書として『New Species on the Block』を発表した。

今回、発表された新種の中には、映画スターウォーズのジェダイマスターのように、長い時間を経て新種と認定されたことから名が付いたテナガザル「Skywalker Hoolock Gibbon(Hoolock tianxing)」や、 米バンド☆NSYNC(イン・シンク)のメンバーである、ランス・バス氏の髪型に似ていることから名が付いたコウモリ「英名未定(Murina hkakaboraziensis)」や、 霧深く苔で覆われ、湿度の高い、中つ国の“エルフの森”のような森に生息することから名が付いたカエル「英名未定(Ophryophryne elfina)」など、ユニークな由来がある生き物もいる。

しかし、近年メコン川流域では、道路や鉄道、ダム建設などインフラ開発による環境破壊が深刻化している。特に大きな要因の一つとなっているのが、天然ゴム農園の拡大であり、生産量の約7割がタイヤに使用され、日本にも多く輸入されている。

WWFアジア太平洋地域自然保護室長のスチュアート・チャップマン氏は、「今後も環境に配慮のない急激な開発による自然の消失が続けば、まだ発見されていない多くの生き物たちが発見されないまま姿を消してしまう可能性もあるだろう」とコメントした。

画像提供:WWF(Hoolock tianxing)