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米朝会談の舞台「ベトナム」 開催地に選ばれた理由は?

米朝会談の舞台「ベトナム」 開催地に選ばれた理由は?

2度目の開催が実現した米朝首脳会談。今回、開催地としてなぜベトナムのハノイが選ばれたのか? ベトナムと北朝鮮に外交関係があり、中立的であること、ともに分断と戦争を経験したことなど、理由は様々に言われている。一方、ベトナムの専門家からは「ベトナムの発展が北朝鮮にとってのモデルになる」との指摘が上がっている。開催国ベトナムの視点から見た、米朝会談ベトナム開催の意味を探ってみたい。
 

ベトナムの発展は北朝鮮のモデル

ベトナムメディア「ザンチー(Dân trí)」に22日掲載された記事の中で、ベトナム社会科学アカデミー米州研究院院長のクー・チ・ロイ准教授がインタビューに対しこう述べている。

「ベトナムは北朝鮮の発展のモデルと見られており、トランプ政権も金正恩氏にベトナムの繁栄の後に続くことを呼びかけています。ベトナムも北朝鮮も、かつて米国との戦争を体験したという大きな共通点があります。しかし今、ベトナムは米国との新しい関係に踏み出すことに成功しました。ベトナムはまた、戦争を乗り越える過程で過去を清算し、外に門を開き、発展し続けています。それが北朝鮮と米国がともに向かう先としての参考になると考えます」
「また近年ベトナムは、国際的に重要な集まりを主催することができる力があることを証明しました。それも、今回の開催地に選ばれた大きな理由の1つです」

昨年の米朝会談の開催地となったシンガポール同様、ベトナムには北朝鮮が学ぶことができる多くの可能性が秘められていると言えそうだ。
 

メディアの公平性の観点から

一方、今回の開催地選びに際しては「もう一度シンガポールで会談するということも考えられたのに、なぜ別の場所になったのか」という疑問も上がっている。これに対し、24日のベトナムメディア「スプートニク・ベトナム(Sputnik Việt Nam)」で、国際軍事・政治問題専門家のグエン・ミン・タム大佐は、ベトナムにおける「メディアの公平性」という観点を上げた。

タム大佐は昨年のシンガポールの会談において、欧米メディアが金委員長側の観点を報じず、米国側の関心事、すなわち北朝鮮の核放棄のことのみを報じた点を指摘。これに対し、1973年のパリ協定(編集部注:フランスのパリで締結された、ベトナム戦争終結のための協定)の開催地となったパリが、植民地時代のベトナムのかつての宗主国であったフランスの首都でありながら国際報道の中心地で、いかなる国家権力や犯罪組織からも独立した、中立的な発信ができる場所だったことを上げている。

「南北朝鮮の人々の最大の願いは、国家・国土・民族の統一だ。(中略)北朝鮮の指導者は、ベトナムにおけるより客観的なメディアにより、彼らの願っていることが全世界に伝わることを望んでいるはずだ。パリ会談の際に中立的な報道がなされたような役割が、ベトナムメディアに求められている」

同じ民族同士による戦争と分断をともに経験した朝鮮半島とベトナム。多くの血が流され、痛みを経験したその地で、今、米朝が平和的に歩み寄る会談が実現したことは、決して偶然ではないだろう。ベトナムでの米朝会談の成果を見守りたい。