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植物のカルシウム欠乏症の仕組み解明へ一歩 東大研究チーム

植物のカルシウム欠乏症の仕組み解明へ一歩 東大研究チーム

東京大学大学院農学生命科学研究科の鹿内勇佑特任研究員、神谷岳洋准教授、藤原徹教授らの研究グループは20日、シロイヌナズナの変異株を解析することにより、カルシウム欠乏条件での生育に必要な遺伝子を解明した。カルシウムの欠乏症は農業生産に被害をもたらいるため、この成果は今後、耐性品種の効率的な育種のための基礎的な知見となることが期待される。

植物の必要元素は現在17種類が知られており、そのうちカルシウムは多量に必要な元素の一つとされている。カルシウムは植物の細胞壁を作るための材料となり、若い葉や果実などの組織は細胞壁合成が盛んなため、その材料としてのカルシウムを多く必要とすると考えられており、欠乏するとトマトの尻腐れ症やハクサイのチップバーンなどを引き起こし、農業生産に被害を与えてしまう。しかし、植物がどのようにカルシウム不足に応答・適応しているのかは、まだ知られていなかった。

同グループは、植物のモデル生物であるシロイヌナズナの中でも、カルシウム欠乏条件で生育が著しく悪くなる変異株を解析した。その結果、Glucan Synthase Like10(GSL10)という遺伝子が低カルシウム条件での生育に必須な遺伝子であることを明らかにした。

さらにGSL10はカルシウム欠乏時の細胞死を抑制することや、カルシウム欠乏時のカロースの蓄積を担うことも発見した。カロースとは、グルコースがb-1,3 結合でつながったb-1,3グルカンを主鎖とする細胞壁多糖で、 細胞分裂時の細胞板形成、原形質連絡の制御、篩板しばんの透過性の制御、病害応答などで重要なことが知られている。

同研究は、植物のカルシウム欠乏への応答の一端を明らかにしたものであり、これまでほとんど知られていなかった植物のカルシウム欠乏への応答の一端を明らかにした。今後、カルシウム欠乏症の起こりにくい耐性品種の効率的な育種のための基礎的な知見となることが期待されている。

植物のカルシウム欠乏症の仕組み解明へ一歩 東大研究チーム

画像提供:東京大学(冒頭の写真はイメージ)