青森県の特産「黒ニンニク」の製造過程で増加する機能性成分を解明 弘前大学

黒ニンニクの健康機能性成分が明らかに 弘前大が解析

弘前大学は8日、同大学院保健学研究科の中川教授と農学生命学部前多教授、青森県産業技術センター主任研究員の山谷らのグループが、青森県の特産黒ニンニクが生のニンニクから製造される過程で、顕著に増加する物質の正体を明らかにしたと発表した。

黒ニンニクは、生のニンニクよりも抗酸化活性などの健康機能性が高いことがこれまでの研究によって報告されており、青森県では平成18年以降に量産され、県内で10億円以上の産業規模になっている。しかし、生のニンニクから黒ニンニクを製造する過程において、具体的にどのような成分が増加するのかは不明だった。

研究グループはESR(電子スピン共鳴:Electron Spin Resonance)※1やHPLC-Tof-MS(液体クロマトグラフィ飛行時間型質量分析計)※2と呼ばれる分析装置を用いることで、黒ニンニクの加工過程による物質挙動と、熟成とともに増加する機能性物質を同定することに成功した。黒ニンニクへの熟成が進むに従い強い抗酸化活性を示す成分が明らかになり、また、他の抗酸化活性を示すメイラード反応化合物※3やポリフェノールが増加することを見出した。さらに、顕著に増加するメイラード反応化合物は「5-HMF(5-ヒドロキシメチルフルフラール)」※4であることを同定した。

今回の研究により、今まで不明であった黒ニンニクの熟成と共に増加する成分とその挙動が明らかになった。この成果は黒ニンニク製品の品質保持や、より機能性成分の高い黒ニンニクの製造方法を考案するうえで貴重であると考えられる。
 

※1 ESR(電子スピン共鳴)…物質中に存在しているフリーラジカル(不対電子を持つ物質)を検出する特別な分析装置。抗酸化活性を感度良く測定することが可能。
※2 HPLC-Tof-MS(液体クロマトグラフ-飛行時間型質量分析計)…微量な物質も精度よく定性や定量する分析装置。
※3 メイラード反応化合物…メイラードは、20世紀にフランスの科学者がこの反応の詳細な研究を行ったことに由来する。食品の加熱中に生成される一般的に褐色の物質で、醤油、みそ、ソース、黒ビールなどの褐色物質もメイラード反応化合物である。抗酸化作用を示すことから、食品の酸化を防ぎ保存性を高めるとともに、健康の向上に役立つ成分も含まれることが近年報告されている。
※4 5-HMF(5-ヒドロキシメチルフルフラール)…はちみつなどの食品にごく微量に含まれる化合物で、糖を含む食品を加熱することで生成するメイラード反応化合物の中間物質。

(写真はイメージ)