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オンラインでグリーンツーリズム 新たな地域活性の取り組み

オンラインでグリーンツーリズム 新たな地域活性の取り組み

グリーンツーリズムとやまは、Zoomで行う帰農塾「オンライン南砺なんと塾」を12月26日に開催した。同団体は富山県の指定を受け、都市と農山漁村の交流やグリーンツーリズム活動を通じて、人間性豊かで活力ある地域社会を目指して活動している。

同団体が開催する「とやま帰農塾」では、富山県内9地域のリーダー(塾長)が、植え付けや収穫等その時季の地元特産物の農業体験や民泊を通して、交流を行ってきた。しかし2020年は新型コロナウイルス感染拡大を考慮して、開催中止や日帰り開催など規模縮小を余儀なくされたという。

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2019年 帰農塾の様子 HP・ブログより
 

12月26日に初めてZoomで行われた帰農塾「オンライン南砺塾」の舞台は、富山県南砺市井波地区。グルメ漫画「美味しんぼ」にも登場した里芋農家である杉森桂子さんの、築150年になる散居村家屋の納屋だ。

体験に使う藁や松の材料は事前に参加者の自宅へ配送されており、参加者はZoom映像で杉森さんの説明を見聞きしながら藁を編み、結んでしめ縄を作り、松や梅の飾りをつけて「しめ飾り」を完成させた。

材料と共に地元で作られた里芋、甘酒、干柿、杵つき餅と昆布餅、銀杏といった特産品も届けられ、しめ飾り完成後には南砺市の特産品を食べながら対話する時間もあり、農村の雰囲気を味わいながらのオンライン交流をした。参加者は5名限定ということで、アットホームかつ濃密な時間となった。

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配送されたしめ縄の材料と南砺市の特産品
 

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しめ飾りの作り方をオンラインで解説する杉森さん
 

イベント後、グリーンツーリズムとやまの高橋さんに、「とやま帰農塾」の活動について伺った。

――活動を始めたきっかけを教えてください。
2003年3月に富山県議会が、全国で初めて議員提案によるグリーンツーリズムの条例「都市との交流による農山漁村地域の活性化に関する条例」を作ったことから始まりました。翌年、当NPO法人が設立され、2005年から田舎暮らし体験として「とやま帰農塾」を開講しました。

中山間地域には豊かな自然で育まれた生活文化がありますが、高齢化、過疎化が進んでいました。グリーンツーリズムをテーマに、都市と農村の交流によってこれらの問題を解消できないかと活動してきました。

――活動の中での苦労や心掛けていることはありますか。
当団体は県の委託事業として、地域で活動されている方と協働して各地に塾を作ってきました。南砺塾の杉森さんは、子育てが一段落してから義母の薦めで農業を始められました。12年ぐらいこの活動をされていますが、最初は地元の方にも受け入れていただくまでには時間がかかったそうです。

例年は3日間、散居村の杉森さんのご自宅の古民家に泊まって農業をしたり、郷土料理を作ったりして、一緒に暮らしを体験するプログラムでとても好評でした。プログラムは塾長さん達の企画アイデアで進められ、私達はサポートしていますが、各地域で頑張っていらっしゃる塾長さんの思いに寄り添って、できる限り支援するようにしています。

――今回、初めてのオンライン開催でしたが参加者の反応はいかがでしたか。
多くの方から反響をいただきました。抽選で参加できなかった方も、郷土の特産品だけでも購入したいですと問い合わせがあり、本当に嬉しかったです。本来は対面式で開催できるのが一番いいのですが、コロナ禍でオンラインも活用しつつ、変化に臨機応変に対応して進めていきたいと思います。

2020年は秋以降、開催できた塾もありましたが、飲食を伴う懇親会はせず、意見交換会という形で交流会を行いました。真っ向から地域の課題やテーマを議論でき、本音の対話ができたことが良かったです。議論の中では、地域の良さをアピールするだけではなく、マイナス面、例えば空き家が増えているとか若い人が少なくなっているとかいう実情も、ストレートに話をしてみました。

参加者からも、旅人として訪れると良い場所だなという好印象を持てるが、地域の悩みを聞いたら今後この地域がもしかしたら消滅してしまうかもしれないという危機感を感じ、繰り返し通って応援したいという気持ちになったという意見がありました。活動の開始から10年ほど経ち、塾長さん達も高齢化して世代交代の波もあります。

この活動は地域の方も巻き込み、地域も元気になるなど、良いエネルギーになっています。今後も、つながりを持ちながら、地域の問題や課題の解決に取り組んでいきたいと思います。
 

(記者後記)
地域活性化の取り組みは、地域が主体となって地域が元気になりつつ、つながりを深めていくことが大事だ。実際に参加してみて、塾長さんの思いに寄り添って活動されている魅力ある試みだと感じた。コロナ禍のオンラインを通して、より新しいつながりが生まれることを願う。
(取材・記事/浅緑綾)