IUCNレッドリスト更新 アフリカゾウの絶滅危機と保全努力

IUCN(国際自然保護連合)は25日、絶滅の恐れがある野生生物を記載する「レッドリスト」の最新版を公開した。今まで単一種として扱われていたアフリカゾウが2種類に分けられ、そのうち1種が「深刻な危機」と評価された。その一方で、保全努力も進んでいることが強調された。

今回、今まで単一種として扱われていた絶滅の危機にあるアフリカゾウを、シンリンゾウ(マルミミゾウ)とサバンナゾウの2種に分けることになった。シンリンゾウは「深刻な危機(CR)」、サバンナゾウは「危機(EN)」と評価された。この二つが別種として扱うように決定されたのは、象個体群の遺伝的研究結果によって専門家の間で形成された合意の結果。シンリンゾウは中部アフリカの熱帯林と、西部アフリカのある範囲だけに限定的に生息している。一方サバンナゾウは、草原や砂漠も含めさまざまな環境に生息し、両者の生息域はめったに重複しない。

最新の評価では、アフリカのゾウの個体数が広範囲で減少している。シンリンゾウの数はここ31年間で86%減少し、サバンナゾウは過去50年で少なくとも60%減少した。その最大の原因は密猟であり、農業と他の土地利用のためにゾウの生息環境の転換が進行していることも脅威だ。

個体数が減少傾向でも、保全努力の成果が強調されている。現場での密猟対抗措置および住民と野生生物の共存を促すことを目的とした、法律と土地利用計画が保全成功の鍵だ。ガボンやコンゴ共和国のよく管理された保全区域ではシンリンゾウの数が安定しており、サバンナゾウもカバンゴ・ザンベジ越境保全区域ではここ数十年間安定もしくは増加している。

IUCN事務局長のブルーノ・オベール博士は、「私たちは、緊急に密猟に終止符を打つとともに、シンリンゾウとサバンナゾウにとって好適な生息環境が十分保全されることを保証しなければならない。近年いくつかのアフリカの国は先鞭をつけており、ゾウの減少を逆転できることを証明している。他の国もそうした事例に続くように私たちは協力して取り組まなければならない」とコメントした。

レッドリストでは現在13万4425種が評価され、そのうち3万7480種が絶滅の危機に瀕している。

画像提供:IUCN(冒頭の写真はサバンナゾウ)

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