伸縮性半導体デバイスで世界最高周波数の駆動に成功 慶応大

慶應義塾大学は9日、柔らかく伸び縮みする半導体デバイスを、非接触ICカードで用いられる高周波で動作させることに世界で初めて成功したと発表した。この研究成果は8日、「Nature」に掲載された。

近年、装着するだけで長期に生体情報が取得できるウェアラブルデバイスへの期待が高まっている。最近は生体のような柔らかさを示しながら、電気特性は半導体材料とほぼ同じの高性能な伸縮性半導体材料を用いたデバイスが実現されている。しかし、これらの駆動周波数は100Hz程度と遅く、現代の電子デバイスには遠く及ばず実用の大きな壁となっていた。

慶應義塾大学理工学部電気情報工学科とスタンフォード大学化学工学科の研究グループは、伸縮性半導体デバイスで13.56MHzの高周波数で駆動できる伸縮性ダイオードを世界で初めて実現した。開発の決め手となったのは、高周波駆動用に伸縮性電子材料を精密にチューニングすることだった。伸縮性電子材料は、元々ガラスのように割れやすい高分子半導体の化学構造の中に柔らかいシリコンゴムの化学構造を少しだけ取り込むことで、高い電気特性と伸縮性を実現した。

開発された高周波伸縮性ダイオードは元の長さの1.5倍の長さに伸ばしても高周波動作し、繰り返しの伸長を与えても高い電気特性を維持できる。今回達成した13.56MHzという周波数は、効率よく無線で電力伝送や通信を行うことができるため応用上非常に重要で、交通系ICカードや携帯電話の無線充電装置などにも用いられている周波数だ。

さらにこの高周波伸縮性ダイオードを用いて、柔らかく伸び縮みするセンサ・ディスプレイ・アンテナと集積化したシステムを作製した。このシステムは、衣服に仕込まれたアンテナからワイヤレスで給電され、センサの信号をリアルタイムでディスプレイ素子の色変化として表示することができる。

ウェアラブルデバイスの課題として電源供給の問題があったが、この研究により無線で電力伝送・通信ができるようになった。今回開発された伸縮性半導体用電子材料はセンサや発光素子などへの転用も可能なため、柔らかいウェアラブルデバイス全体の性能向上が見込まれ、実用化が一歩近づいたとしている。

画像提供:慶応大学(冒頭の写真はイメージ)

 

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