理研と富士通、量子コンピュータ研究の連携研究拠点を開設

富士通、「富岳」技術を活用して36量子ビットの世界最速量子シミュレータを開発

富士通は3月30日、スーパーコンピュータ「富岳」の技術を活用して、36量子ビットの量子回路を扱うことができる量子コンピュータシミュレータ(量子シミュレータ)を開発したと発表した。これを用いて同社は、富士フイルムと材料分野における量子コンピュータアプリケーション(量子アプリケーション)の研究を4月1日から開始する。

量子コンピュータは古典コンピュータと比較して、指数的な計算速度の向上が見込まれる。しかし、さまざまな課題のために実用的な量子コンピュータの実現は数十年先とも言われている。その一方、古典コンピュータ上で動作する疑似量子コンピュータとも言える量子シミュレータの開発が進められている。

富士通は、スーパーコンピュータ「富岳」に用いたCPU「A64FX」を用いたスーパーコンピュータ「PRIMEHPC FX700」において稼働する、並列分散型の量子シミュレータを開発した。量子シミュレータソフトウェアには大阪大学とQunaSys(東京都文京区)が開発したオープンソフトウェアの「Qulacs」を採用して、並列分散実行を可能にすることで高速化した。36量子ビットの量子シミュレータとして、他機関が開発した主要な量子シミュレータと比較して約2倍の性能を達成し、世界最高速の処理速度を実現した。

富士通と富士フイルムとの共同研究では今後、分子の化学反応などにおける量子コンピューティング特有のアルゴリズムの検討と評価を行っていくとしている。

富士通はより大規模かつ高速な量子シミュレータの実現に向け、2022年9月までに40量子ビットの量子シミュレータを開発し、金融や創薬などの分野へ展開していくとのこと。量子コンピューティング技術を活用した社会課題解決の早期実現を目指す。

(写真はイメージ)

 

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