
なぜ火星は赤いのか? 鉄・塩・水の関係を明らかに 金沢大
金沢大学などの研究グループが、火星が赤い理由について新たな手がかりを発見した。火星の地表を赤くしている「ヘマタイト」という鉄の鉱物が、塩分を含んだ水の影響でできやすくなることを実験によって明らかにした。この発見は、火星が過去にどんな環境だったのかを探る上で重要な成果だ。6月4日付で米国化学会が発行する学術誌『ACS Earth and SpaceChemistry』のオンライン版に掲載された。
火星の地表には、「フェリハイドライト」という水の存在する環境で鉄が酸化して生じる鉱物が広く分布していることが確認されている。この鉱物は地球上で時間が経つと、赤いヘマタイトや黄色いゲーサイトに変化する。ところが、火星でヘマタイトは多く見つかるのに、ゲーサイトはほとんど見つかっていない。この違いの理由はこれまでわかっておらず、火星の環境に関する重要な謎の一つとなっていた。
今回、研究グループは、フェリハイドライトを塩分のある水中に置いて、酸性やアルカリ性といったさまざまな条件下での変化を実験した。その結果、太古の火星に存在したと考えられる塩分が多い環境では、酸性・アルカリ性にかかわらず、ゲーサイトはあまりできず、主に赤いヘマタイトができやすいことがわかった。
特に、火星に液体の水が最後に多く存在していた時期に想定される「酸性で塩分の多い条件」では、ゲーサイトの生成がほとんど起こらず、ヘマタイトが優先的にできることがわかった。これによって、現在も見られるような赤い火星の地表が形成された可能性が強まった。
この研究は、火星の「赤さ」が単なる鉄の酸化ではなく、塩分を含んだ水の存在と深く関わっていることを示す。これにより、火星の過去の気候や地質の成り立ちについての理解が進むと期待される。今後、火星探査機やサンプル採取による調査と組み合わせることで、さらに詳しい過去の環境の復元が可能になるかもしれない。

画像提供:金沢大学(冒頭の写真はイメージ)