[書評]50組それぞれの「夢」のかたちー『WE HAVE A DREAM 沖縄を愛するうちなーんちゅの夢 –好きを力に未来を生きる』
『WE HAVE A DREAM 沖縄を愛するうちなーんちゅの夢 –好きを力に未来を生きる』は、沖縄出身の著名人や沖縄を愛する総勢50組が「夢」について語った本だ。
「うちなーんちゅ」という言葉は本来、「沖縄出身者」と「ないちゃー(内地出身者)」を区別するときに使われることが多い。しかし本書では「うちなーんちゅ」のことを「沖縄を心から想う人のこと」だと表現している。
登場する50組は、音楽バンドのHYや琉球ゴールデンキングスに所属するプロバスケットボール選手の岸本隆一氏のほか、事故に遭ったヤンバルクイナなど野生動物の救護活動を行う獣医師の長嶺隆氏、西表島でエコツーリズムに取り組む徳岡春氏、アナウンサー、客室乗務員、琉球舞踊家、語り部バスガイドなど、職業も年代もさまざま。
沖縄出身者だけでなく、国内外の各地で沖縄のことを想って働く50組の人々が、「伝える」「守る」「つくる」「つなぐ」「変える」の5つをキーワードに、夢をかたちにしていくまでのステップについて綴られている。
さらに、美しい海や青々とした山など沖縄の豊かな自然や、独特の文化風習など沖縄の魅力についても、50組がそれぞれの観点で紹介している。
特徴的なのが、一人一人が夢を持ったきっかけや夢に向かって進む中での挫折、未来への想いを、「ちむぐりさ」*1「ちむぐくる」*2など、「うちなーぐち(沖縄の方言)」を用いて書いているところだ。その独特な表現にはなんともいえない温かみと優しさがあり、読みながら、話しかけられているような感覚になる。
本書で描かれた50パターンの「夢」の実現までのプロセスを通して、沖縄に興味があってもなくても、今夢があってもなくても、国籍も年齢も性別も関係なく、自分の居る場所で小さな「好き」を探してみたくなる1冊だ。
*1「ちむぐりさ」…「あなたが悲しいと、私も悲しい」という意味
*2「ちむぐくる」…「心に宿る深い想い、真心」という意味
『WE HAVE A DREAM 沖縄を愛するうちなーんちゅの夢』
編集:沖縄ドリームプロジェクト
発行日 : 2022年10月1日
発行 : いろは出版
(冒頭の写真はイメージ)