東大、富士通など、5Gコアネットワークの国産・低コスト化に成功

5Gコアネットワークの国産・低コスト化に成功 東大、富士通など

東京大学と富士通は24日、ローカル5G/6Gモバイルシステムのオープン開発に取り組んで、5Gコアネットワーク(5GC)の国産・低コスト化に成功したと発表した。特定のエリアで利用されるローカル5Gのシステムが従来よりも低廉なコストで導入可能になり、各種産業分野におけるローカル5Gの普及につながることが期待される。

今回開発した5GCのイメージ

今回開発した5GCのイメージ

ローカル5Gとは、企業や自治体などがエリアオーナーとなって自ら整備できる5G(第5世代移動通信システム)ネットワークのこと。携帯電話システムに使われている5Gの技術を転用することで、現在の自営ネットワークの主流であるWi-Fiよりも高セキュリティで安定した通信が可能になる。

携帯電話網は社会を支える重要なインフラシステムであり、それを構成する技術は世界共通規格となっている。しかし、実際の携帯電話網で利用されている通信機器の多くは海外メーカーが製造し、そこに含まれる知財の多くも海外企業の管理下にある。そのため、2025年以降に実現が見込まれるポスト5Gや次世代の通信規格を見据えて、日本の企業や研究者が主体的に扱える製品を持つことが、市場競争や経済安全保障上重要な課題となっている。

東京大学、インターネットイニシアティブ(IIJ)、アプレシア(APRESIA)、富士通は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究委託「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に2020年10月から取り組んできた。このうち、IIJ・APRESIA・富士通は、5G携帯電話網の中枢である5Gコアネットワーク(5GC)をオープンソースソフトウェア(OSS)を元にして、商用レベルの機能・性能・安定性を備えた「実用版」として実装した。東京大学はこの事業で開発した5GCのデータ転送・経路選択を担う機能(UPF:User Plane Function)を高度化し、新たな特許として出願した。

この事業により開発された5GCは、大手通信キャリア向けの数千万回線を管理することを想定した5GCとは異なり、数回線~数千回線を効率的に管理できるようなコンパクトな実装となっている。また、OSSを元に開発したことにより知財コストの負担が軽くなったため、ローカル5Gのような小規模な5Gシステムを多数構築するような環境に適している。

OSSはソースコードがすべて公開されているために不正な意図を持ったプログラムの混入がないか確認可能であり、透明性の点で優れている。一方で商用利用に必要な機能が不足していたり、性能や安定性の検証が十分にできていなかったりという課題もある。

この事業では商用ネットワークの運用を行っているIIJの知見を元に機能を追加し、商用ネットワーク製品を多数開発するAPRESIA・富士通の技術により性能の向上、安定性の検証を実施、商用製品として利用可能なレベルにまで品質を引き上げた。透明性が確保された実用性の高い5GCを日本企業が提供可能になったということは、経済安全保障の観点から重要であり、ポスト5G時代だけでなく次世代の通信規格のイニシアチブを取る上でも意義がある。

今後は東京大学と民間企業による産学連携の取り組みの中で、開発した5GCを活用した製品・サービスの検討を進めるとともに、5G携帯電話網のさらなる進化に向けた取り組みを加速させていくとしている。

APRESIA・富士通が製品化した「ローカル5Gシステム」のイメージ

APRESIA・富士通が製品化した「ローカル5Gシステム」のイメージ

IIJが推進する複数のローカル5Gシステムのイメージ

IIJが推進する複数のローカル5Gシステムのイメージ

画像提供:東京大学(冒頭の写真はイメージ)