マグネシウムと紙から環境負荷の低い電池を開発 東北大

東北大学は19日、マグネシウムと紙から低環境負荷の新型電池を開発したことを発表した。ウェアラブルデバイスや非常用電源などへの応用が期待できる。この研究成果は英国化学会誌に掲載された。

次世代のエネルギーデバイスには高出力・高容量といった性能面以外に、環境負荷が低いことも求められる。しかし一般的な電池には、環境負荷が高く資源量に制限のある様々な重金属やプラスチックが多用されている。例えばリチウムイオン電池(LIB)は、リチウムの資源制約がある。

一方、亜鉛やマグネシウムなど溶けやすい金属を負極とした金属空気電池は、LIBよりも3倍以上の重量エネルギー密度を持つ次世代電池として期待されている。金属空気電池をより低環境負荷で使いやすくするため、紙の表面に正極を形成し、反対側に亜鉛負極を配置することで電解液をトリガーに発電する「金属空気紙電池」が、これまでに開発されていた。しかし、有害なアルカリ性の電解液が必要だったり、出力レベルなどに問題があった。

東北大学などの研究グループはこれまで、青色顔料の一種である金属アザフタロシアニンを炭素上に分子吸着して作った「AZUL(Azaphthalocyanine Unimolecular Layer)」触媒電極を用いて、レアメタルフリーの高性能な金属空気電池を開発してきた。今回はろ紙などの紙に正極はAZUL触媒をコートし、負極にはマグネシウムを用いて集電体で挟み、金属空気紙電池を作成した。その結果、塩水を電解質としたとき、紙の密度を最適化することが電池性能の向上に重要だと示された。そして、最適化したセルで1.8Vの電圧と100mW/cm2以上の出力を実現した。

金属空気紙電池によるSpO2計の駆動と酸素飽和度・脈拍のリモートモニタリング

作成した金属空気紙電池で、SpO2測定器(パルスオキシメーター)とGPSつきスマートライフジャケットについて実証実験を行ったところ、実用できることが示された。この電池は高性能でありながら、土壌や海水中に豊富に存在するマグネシウム、安全な触媒、紙、炭素など、環境に優しい素材で構成されているため、廃棄時の環境負荷が低く安全である。このため、様々なウェアラブルデバイスや非常用電源などへの応用が期待できるとしている。

金属空気紙電池によるスマートライフジャケットに装備したGPSセンサーの駆動とGPS情報のリモートセンシング

画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)

参考記事:レアメタル不使用でも高電圧・高出力の空気電池を開発 東北大学(2023.05.01)