微生物により温室効果ガスN2Oを除去するプロセスを開発 東北大学

東北大学は1日、微生物を用いて一酸化二窒素(N2O)を高速に除去する新たなプロセスを開発したと発表した。環境への負荷が低く、廃水処理プロセス由来の温室効果ガス削減などに貢献することが期待できるという。この研究成果は国際学術誌に掲載された。

N2Oは二酸化炭素(CO2)の273倍の地球温暖化係数を持つ温室効果ガスで、温暖化効果への寄与率は6%程度である。国連環境計画では、2050年までにその排出量を40%削減することが求められている。人為起源のN2O排出量のうち工業廃水・廃棄物由来が全体の5%程度を占め、その中には廃水処理プロセスからの排出が含まれる。特に廃水中に含まれる窒素を除去するプロセスにおいて高濃度のN2Oが発生することが報告されていた。

「DHSリアクター」を用いたN2O除去バイオプロセス

東北大学の研究グループは今回、微生物の働きによって廃水処理からのN2O除去プロセスを開発。微生物が生息するスポンジ中に廃水を重力で流して処理する装置が「DHSリアクター(Down-flow Hanging Sponge reactor)」だ。

廃水として嫌気性消化汚泥の脱離液を注いだDHSリアクターに、N2Oを含む窒素ガスを供給したところ、300ppmまでの濃度域では3分程度、2000ppmでは18分でN2Oの94%以上を除去することに成功した。また、N2Oを処理する微生物については、N2O還元微生物であるアゾネクサス属細菌が重要な役割を果たしていることがわかったという。

今回の研究成果により、廃水処理プロセスから発生するN2Oを除去可能であり、廃水処理事業などに関連する温室効果ガスの削減に寄与できるという。同グループは今後、実用化のために実際の廃水プロセスでの実証実験を進めていき、N2O除去微生物に関する知見を応用して人為起源N2O排出量の55%程度を占める農業分野へも展開していくとしている。

DHSリアクターを用いたN2O除去バイオプロセス

画像提供:東北大学