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乾きやすくて涼しい、沖縄伝統の「芭蕉布」の特性を解明 OIST

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は11日、沖縄で500年以上にわたり衣服に用いられてきた芭蕉布ばしょうふの特徴の一つである「しなやかさ」の科学的根拠を明らかにしたと発表した。持続可能な素材開発のヒントになることが期待できる。この研究成果は国際学術誌に掲載された。

夏は高温多湿な気候が続く沖縄で、500年以上にわたり人々に涼しさと快適さをもたらしてきた芭蕉布。芭蕉布の着物は乾きやすくて涼しいだけでなく、一般的に硬いと言われるバナナの繊維から織られているにもかかわらず、非常に柔らかいのが特徴だ。

芭蕉布の繊維は、イトバショウというバナナの一種から採取される。芭蕉布の製作には、繊維の採取から衣類へと加工するまでに、23の工程が必要だ。これらの工程を最適化するために、実験室技術の導入が一部で試みられてきたが、伝統的な方法と同等の品質を達成した例はなかった。

研究グループは、持続可能な素材のヒントを得るために伝統工芸の芭蕉布に着目した。芭蕉布の素材と技法が繊維構造にどのような変化をもたらし、柔らかさ・丈夫さ・通気性を兼ね備えた布地を生み出しているのかを詳しく分析した。

芭蕉布の材料となるのは、特に3年目のイトバショウの葉の付け根が筒状になった偽茎(葉鞘)部分から採取する繊維だ。中心部が柔らかく着物用の織物に適した強度としなやかさを持っているが、外側に向かうにつれて硬くなる。外層側のワーハと呼ばれる繊維はインテリアの織物用として使われる。中心部のナハグと呼ばれる柔らかい繊維が着物用に適していて、さらにヌキ(緯糸)とハシ(経糸)に分類される。

職人たちは、偽茎から繊維を分離する際に、材料の手触りや色合いを頼りに繊維の違いを見分ける。上質な着物を1着作るには、少なくとも200本の偽茎から繊維を採取する必要があり、この作業には熟練した技が必要だ。

今回、画像解析によって、肉眼では確認できないが、ナハグ繊維はワーハ繊維に比べて細胞壁が著しく薄いことがわかった。これらの繊維はハニカム(ハチの巣)構造を成していて、水分の拡散を促し、汗を皮膚から遠ざけることで体を涼しく保つ役割を果たすと考えられるという。

同グループは、今後も各加工工程が繊維に与える影響の記録、引張強度の試験、イメージングによる繊維細胞の形態解析を通じて、芭蕉布の技術を後世に継承するとともに、沖縄の気候に適した独自の工芸品に関する将来の研究基盤の構築を目指すとしている。

©沖縄観光コンベンションビューロー

©小泉好司 左)イトバショウ 右上)芭蕉布(スケールバーは10ミリ) 右下)右上の写真の白枠部分を拡大したもの(スケールバーは1ミリ)。矢頭は、手作業で結ばれた織り糸の結び目を示している。

(冒頭の写真はイメージ)