緩衝材の破裂音で非破壊検査 芝浦工大・都立大が開発

芝浦工業大学と東京都立大学は2日、電力を使わず気泡緩衝材の破裂音を音源として利用する、新しい非破壊検査システムを開発したと発表した。高価な装置や電力を必要とせず、可燃性物質がある環境下でも安全に使用できる、低コストな非破壊検査手法として期待される。

非破壊検査は、構造物を破壊せずに健全性を評価する技術であり、配管、タンク、橋梁、機械などの保守に広く用いられる。従来の手法では、音源としてスピーカー、レーザー誘起プラズマ、火薬、電気スパークなどを使用していたが、これらは高出力が必要で、可燃性物質が存在するような環境や狭い場所などでの使用は難しかった。

研究チームは、身近な気泡緩衝材を潰した時の「プチッ」という破裂音が、最大40kHzの周波数成分を含む再現性の高いインパルス音源であることに着目した。研究チームはさまざまな気泡緩衝材の音圧、パルス幅、周波数帯域などの音響特性を評価することで、非破壊検査に適した気泡緩衝材を選定。最適な気泡緩衝材を破裂させ、そのインパルス音源を生成し、これをマイクで測定する非破壊検査システムを構築した。反射音をウェーブレット解析(周波数と時間の変化を同時に見る波形解析)することによって、配管内部の異物位置を高精度に特定することができた。

このシステムは従来のスピーカー、火薬などの音源と比べて、配線の煩雑さや火災リスクを回避でき、可燃性物質が存在するような環境でも安全に使用可能だ。シンプルな構成でありながら、測定精度は従来装置と同等レベルを達成した。

身近な素材の中に社会を支える技術の種を見出した研究成果だ。研究チームは今後、より高感度化を図り、複雑な構造や深部欠陥の検出にも対応できるよう改良を重ね、携帯型(ハンディタイプ)装置への展開を目指していくとしている。

画像提供:芝浦工業大学