
小惑星から6種類の糖を検出 生命の起源に迫る 東北大など
アメリカの小惑星探査機OSIRIS-REx(オシリス・レックス)が地球に持ち帰った小惑星べヌーの砂を東北大学などの研究チームが調べた結果、生命の材料のひとつである「糖」が見つかった。生命の設計図の元になる核酸の材料「リボース」と、体を動かすエネルギー源になる「グルコース」など6種類の糖が検出された。小惑星上でも生命に必要な材料が自然に存在している重要な証拠となる。2日、科学誌「Nature Geoscience」に論文が掲載された。
小惑星から持ち帰った物質を調べる日米の研究で、これまでにタンパク質の材料であるアミノ酸、核酸(DNAやRNA)の材料である核酸塩基とリン酸が発見され、宇宙から地球に生命の材料が運ばれた可能性が指摘されてきた。しかし、糖については地上に落下した隕石で報告例があるものの、宇宙空間にあったものか確実にはわかっていなかった。核酸を作るためには糖が不可欠なため、糖の存在は「生命の材料が宇宙でどこまで揃っているのか」を理解するうえで大きな鍵となっていた。
今回の研究では、ベヌーから持ち帰った砂を化学的に処理し、微量の有機分子まで詳しく分析した。その結果、RNAをつくる「リボース」、主要なエネルギー源となる「グルコース」、そのほか「キシロース」「アラビノース」「リキソース」「ガラクトース」と計6種類の糖類が見つかった。特に、宇宙でグルコースが確認されたのは今回が初めてという。これにより、これまで隕石などで見つかっていたアミノ酸や核酸塩基とあわせて、「生命をつくるための三大材料」がすべて小惑星にあることが示された。つまり、地球外に生命の材料がそろっている可能性が非常に高まったのだ。一方で、DNAの材料になる「デオキシリボース」は見つかっておらず、初期の生命がRNAを中心にしていたとする「RNAワールド仮説」を支持する可能性の1つになり得そうだ。
今回の発見は、宇宙における生命の起源を考えるうえで大きな前進となる。今後は、ほかの小惑星や彗星などから持ち帰ったサンプルを調べることで、こうした糖がどれくらい広く存在するか、その種類や量はどのくらいかを調べることになるだろう。その結果、原始地球にどれくらいの量の「生命に関連した材料」が宇宙から降り注いでいたのかを理解する手がかりにもなることが期待される。

