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ご当地自慢を探せ!(43)栃木県民のふるさとの味「しもつかれ」

栃木県を代表する郷土料理のひとつに「しもつかれ」がある。大根、にんじん、大豆、鮭の頭、酒粕などを煮込んだ料理で、節分の豆まきの残りや正月料理で残った塩鮭の頭を活用して作られるとされる。年の節目に出た食材を無駄なく使う知恵が込められている。名称の由来には諸説あり、現在の栃木県にあたる「下野(しもつけ)国」に由来する説などが知られている。

かつては旧暦2月の初午はつうまに、稲荷神社へ供える神事食として作られていたが、時代とともに信仰的な意味合いは薄れ、家庭で食される料理として定着していった。「七軒のしもつかれを食べると病気にならない」と言われるほどで、大豆のたんぱく質や鮭の頭のカルシウムなど、栄養価の高い食材を組み合わせた料理として、日常のご飯のお供にも親しまれてきた。

調理には手間と時間がかかる。大根やにんじんは、「鬼おろし」と呼ばれる鬼の歯のようにギザギザした専用のおろし器で粗くおろし、刻んだ材料を鍋で煮込んだあと、数日置いて発酵させる工程を経る。

筆者自身、栃木県出身で、小学生の頃は給食でしもつかれを食べていた。子ども向けに酒粕を使わず工夫されていたが、人気のある献立ではなく、教室では多くの子が手をつけずに残していた記憶がある。大人になってから改めて口にしてみると、その印象は大きく変わった。分かりやすい味ではないが、「滋味」という言葉がしっくりくる料理だと感じるようになった。

鬼おろしといった特別な道具が必要なこと、下ごしらえや発酵に時間がかかることから、近年は家庭で一から作る人は以前より少なくなっているようにも感じる。一方で、栃木県内のスーパーで販売されるなど、別のかたちで人々の日常に残っている。

また、その価値を改めて伝えようとする動きもある。しもつかれJAPANのウェブサイトでは、しもつかれをサステナブルな郷土料理として位置づけ、さまざまな視点から発信している。同サイトを企画・運営する、しもつかれブランド会議の代表の青栁徹氏は、次のように語る。

「今は、何気ない“どうでもいい話”をする機会自体が、なかなかなくなっていると思うんです。でも、しもつかれという郷土料理を真ん中にすると、そういうコミュニケーションが自然に生まれる。好きだった人もいれば、給食で残していた人もいる。良い悪いにかかわらず、誰にとっても何かしらの記憶がある料理だと思うんです。そうした記憶を持ち寄りながら、大人になって味覚が変わり、改めておいしく感じられるようになる。そういう場面って、すごく大事だなと思っています」

好き嫌いが分かれやすい料理であることも、しもつかれの一面だろう。しかし、その背景にある暮らしの知恵や季節との関わりを知ると、見え方は変わってくる。筆者にとってもしもつかれは、いまでは年に一度、この時期になると食べたくなる、ふるさとの味のひとつだ。

画像提供:しもつかれブランド会議