
宇宙にも「天気」がある? 高解像度で太陽表面の「渦」を観測
地球では猛暑や豪雨など異常気象が相次いでいる。一方、約1億5000万キロメートル離れた太陽でも、非常に高温で電気を帯びた粒子が自由に動く状態の「プラズマ」が渦を巻く現象が起きていることが分かった。米国やドイツなどの研究チームは8月5日、英科学誌『Nature』で、太陽の表面にあたる「光球」で「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性(KHI)」による渦を捉えたと発表した。太陽の光球でKHIを直接確認したのは初めてだ。
研究には、米国立太陽観測所(NSO)やドイツのマックス・プランク太陽系研究所などが参加し、米国立科学財団(NSF)の「ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(DKIST)」で観測した。2025年4月、太陽の黒点近くにある磁気活動が活発な領域を、約19キロメートルの細かさまで見分けられる高解像度で捉えた。その結果、磁気要素と周囲の太陽表面の粒状構造との境界に、数十キロメートル規模の渦が次々と現れることを確認。47個の渦を解析したところ、大きさは約25~170キロメートルで、渦同士の間隔は平均約65キロメートルだった。コンピューターを使った計算でも、観測された渦とよく似た構造が再現された。
KHIは、異なる速さで動くガスなどが接する境界で、速度の違いによって波や渦が生まれる現象だ。太陽では、この渦が磁場を複雑に絡み合わせ、磁場の変化やエネルギーが失われていく過程に関係するとみられる。研究チームは、KHIが物質やエネルギー、磁場などを運ぶ重要な仕組みになり得ることも示した。こうした働きは、太陽の外側を取り巻く大気「コロナ」がなぜ表面よりはるかに高温になるのかを解明する手掛かりになる可能性がある。
ただし、今回の渦が地球の猛暑や豪雨などを直接引き起こしているわけではない。「地球の天気」と「太陽の天気」は別物だ。太陽表面付近で起きる大規模な爆発現象「フレア」や、太陽から大量のプラズマが放出される「コロナ質量放出」が起きると、地球周辺の宇宙環境が乱れ、人工衛星やGPS、通信などに影響することがある。こうした変化は「宇宙天気」と呼ばれる。今回の研究は宇宙天気を直接予測するものではないが、その背景にある太陽の磁場やプラズマの動きを理解する一歩となる。
(冒頭の画像はダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡が416nmの波長で捉えた、太陽表面の史上最高解像度の画像。ケルビン・ヘルムホルツ不安定性に伴う磁気要素の境界の変形や、極めて細かな縞模様が見られる。Credit: NSF/NSO/AURA/MPS)

